『-one-』

子供なココロ大人なカラダ P7


 陸の隣に座り直すと陸が立ち上がろうとして思わず手を掴む。

「どこ行くの?ねぇ…座って?」

 陸の手を握ったまま麻衣は真っ直ぐ陸の顔を見上げると、陸は恐る恐るという感じで麻衣の顔を見た。

「いいの?」

「何が?」

 陸は戸惑いを隠せない表情をして麻衣の手を握り返した。

「…麻衣の隣に座っても…いいの?」

「はい?」
 
 言われている意味が分からない、だって避けてるのは陸の方なのに。

「だって…触らないで…って麻衣が…」

「はぁ?」

 全く二人の話が噛み合ってない。

「私が?いつそんな事言った?」

「はっ?覚えないの?」

 お互いに顔を見合わせて納得のいかない顔をしている。

「一週間くらい前に言ったじゃん!朝、俺がエッチしようとしたら…」

「一週間くらい前…?」

 そんな事言ったっけ?

 暫く考えて記憶の紐を辿っていく…一週間前の朝…うーん。

「あっ!」

 かなりの時間の沈黙の後にようやく記憶が戻って来た。

 麻衣の中ではもうすっかり忘れていた過去の出来事だった。
「朝から陸が強引にエッチしようとした時…私が陸をバチーンって叩いたんだっけ?」

 陸は無言で何度も頷いている。

「…で、それが?」

 陸はあんぐりと口を開けたまま固まった。

 うわぁ…久々に見ちゃった。

 陸の目からは今にも涙が零れそうにウルウルしている。

「陸?りーく?陸くーん?」

「なに」

 これって形勢逆転?

 涙目の陸が怒った顔しながら睨みつけている。

「あれが原因で昨日から態度がおかしかったわけだ!」

 一人で納得している麻衣を横目に陸は大きなため息を吐いた。

 あれ?何か私ってばまた何か間違えた?

「昨日から?昨日から?本当にそう思ってるの?」

 あ…えーとぉ…

 何か陸ってば思ったより怒ってる?

「昨日…からじゃない?でも最近仕事が忙しくて全然顔合わせてなかったよね?」

「毎日、毎日、毎日、帰りがあんな時間になるって思ってた?おかしいと思わなかった?」

 少し興奮気味の陸に圧倒されて麻衣は何も言い返せなくなってしまった。

「触って嫌われたくないからなるべく顔合わせないようにって人が努力してたのに…」

 全然気付かなかった…。

 というより言った事すら忘れてれば陸だって怒って当たり前だよね。

「昨日だって俺のオフに店に顔出したりして本当に嫌われたのかと思ったんだよ?」

「えっ?オフって昨日お店に…」

「あれは、誠さんが忙しくて店が回らないからって急に電話して来て…」

 そんなつもりなかったのに悪い事しちゃったなぁ…。

「陸、ごめんね」

「あーもぅ!!」

 陸は両手で顔をゴシゴシ擦ると頭を抱え込んで体を丸くした。

「え?あ…すごい怒ってる?」

 予想以上に怒っている様子の陸に麻衣は困惑しながら掛ける言葉を探してオロオロした。


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