『-one-』

子供なココロ大人なカラダ P6


 仕事帰りに昨夜の陸の事をもう一度思い返している。

 一緒にタクシーで帰ったけれど疲れているのかいつものような会話もなく目を閉じて寝ているように見えた。

 部屋に着いてからもやっぱりおかしいとしか言いようがなかった。

「陸、お風呂沸いたよ?」

「いや後でいいよ。麻衣が先入って」

 仕事から帰るとすぐにシャワーかお風呂と決まっている人なのに珍しくスーツを着たままソファに座ってテレビを見ている。

 麻衣が風呂から出て来てもまだテレビを見ていた。

 おもしろいの?と聞くと何だか曖昧な返事が返ってきた。

「まだ寝ないの?」

 しばらく一緒にテレビを見ていたけれどさすがに眠さも限界まで来て陸に声を掛けると「もう少し起きてる」と返事が返ってきた。

 ベッドに入ってうとうとした麻衣は陸がベッドに入ったのを感じたけどいつものように麻衣を抱きしめる事はなかった。

 やーっぱりおかしいよ。

 いつもだったらお風呂だって乱入してくるし寝る時だって必ずっていいほど一緒にベッドに行くのに。

 なんだかよそよそしかった。

 距離があるっていうか…あからさまに避けられてるっていうか…。

 もしかして…浮気!?ううん、陸に限ってきっとそんな事ないはず。

 いや…陸に限ってなんてそんな風に思っちゃだめなのかもしれない。

 陸はその辺の人よりずっと格好いいし若いしホストだし…私と一緒にいる事の方が奇跡なんだよね。

 理由…確かめないとね。

 玄関の前に立って深く深呼吸するとドアを開けていつものように「ただいまぁ」と声を掛けた。

 夕飯の片づけを済ませてリビングに戻るとやっぱり昨日と同じようにソファに座ってテレビを見ている。

「麻衣が見たいって言ってたDVD借りてきたんだ」

 麻衣の視線に気が付いたのか声を掛けてきた。

 相変わらず視線はこっちにチラッとも向けずにDVDを見る為の準備をしている。

「お酒持って来ようか?」

「いや…俺はいいよ」

 何なのー?その素っ気無い言い方。

 少しムカッとしながらもソファに腰掛けると陸はすぐに再生ボタンを押した。

 借りてきてくれたのは見そびれていた洋画だった。

 陸の方をチラッと見た。

 陸は表情も変えずに見ている映画を見ているというより…テレビの画面を眺めているような感じ。

 それにてもこの距離…。

 何で大人が二人も座れるくらい離れているわけ?

 いつもだったら後ろから抱っこしながらとか膝枕とか…。

 いちゃいちゃしてて結局最後まで見れずにエッチに突入!って感じだったりするのに。

 この手も握れない程離れて座る理由は何なの?

 段々とイライラして来た麻衣はリモコンに手を伸ばすと強制的にテレビの電源を落とした。

「麻衣?」

 さすがに今度ばかりは麻衣の方を見て声を掛けてきた。

「…なのよ」

 麻衣は立ち上がって陸の前に仁王立ちになった。

 だが陸は麻衣を見ようともせずに視線を逸らして俯いた。

「その態度は何なのよ!」

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