『-one-』
二人暮らし P2
−引越し当日−
麻衣の部屋は若い男の人であふれかえった。
何でかって?
「引越し業者よりいいですよ?しかもタダ…ですよ?」
閉店後、同棲を報告した時の誠さんの一言。
そんなの悪いですって私が断ってるそばから“手伝う奴は日当一万”って誠さんの言葉にみんな手挙げてるし…。
そんなわけで無駄に人数が多くて無駄にイケメン揃いの引越しが始まりました。
「麻衣さん、電化製品も運びますよね?」
本日の引越隊長らしい悠斗が張り切って麻衣の元へ来た。
「でも一通り揃ってるから二台もいらないからどうしようかな。あ…欲しい物があれば持ってく?」
私の一言でみんなの手が止まって私を振り返って期待した目を向ける。
「いらない物に紙貼るからケンァしないで決めてね」
そう言って持って行かない物には紙を貼って分別する。
「俺、ベッド!!」
「俺も、ベッド!」
ってそんなにベッドが欲しかったの?
皆がベッドに群がっている…すごく普通のベッドなんだけど…。
「麻衣さんの匂いがする〜」
はっ?匂い!?
「ちょ、ちょっと…みんな」
「誰の匂いだって?」
ベッドに群がってた子達がその声に飛び退いた。
「来て正解だよ。お前ら後で覚えとけよー」
珍しくジャージに身を包んだ陸が怖い顔をして部屋の入り口に立ちみんなを睨みつけた。
「向こうで待ってるんじゃなかったの?」
「お、遅いから来たに決まってるだろ。早く片付けろよ」
本当は向こうで一人で寂しかっただけなんでしょ?
と、言いかけたけど黙っておくことにした。
「心配しないで下さいよ、俺がちゃんと麻衣さんと荷物送り届けますよ?」
あ…陸の気持ちが分かる人がもう一人。
ニヤニヤしながら悠斗くんが陸に話し掛けている。
「いいから早く運べって」
少し照れた様子の陸は詰め終わったダンボールを外に運び出した。
人数だけは居ただけあってにあっという間に陸の部屋に荷物を運び込んでみんなは日当を貰う為にお店へ出勤した。
部屋の隅にはダンボールの山が出来た。
「陸、休憩しよー」
今日と明日と休みを取ってくれた陸がテキパキと荷物を片付けてくれている。
「ありがと」
私からコーヒーを受取るとソファに腰掛けた。
「結構荷物あるもんだな?もっと広い所に引っ越す?」
「ううん、二人だしここで十分だよ」
リビングは20畳で寝室だって12畳、他に10畳の部屋もあるのにこれ以上広い部屋になったら居心地悪いと思う…。
「細かい物は暇を見て片付けるからもういいよ。暫くはダンボールで埋まっちゃうけど許してね?」
ダンボールの山を見ると気が滅入るがこればっかりは仕方がない。
「全然、気にならないよ。これからはずっと麻衣が居てくれる」
陸はカップをテーブルの上に置くとジワジワと麻衣の方へにじり寄った。
て私もカップを置いてジワジワと離れて行く。
「麻衣?どうしたの?」
「本能が危険を察知して…」
二人の距離は変わる事なく部屋の中を移動している。
「逃げ場所ないよ?」
「じゃあ朝までこのまま」
「諦めたら?」
「陸こそ諦めたら?」
ドンッ−
麻衣の背中は壁にぶつかってしまった。
「つーかまえたっ!」
嬉しそうな顔をして私の腰を抱き寄せた。
「もう逃げられないよ?大人しく抱かれなさい」
抱き上げられてベッドまで運ばれた。
「片付けの途中だし、夜、夜にしようよ!ね?」
こんな時間から陸に抱かれたら片付けどころじゃなくなっちゃう。
「それにこれから毎日一緒なんだから…」
「そうだよね、夜も毎日一緒に居られるしね」
私の上に覆いかぶさってすっかりやる気十分の陸が体を少し離して考えている。
「そうそう、だから今じゃなくてもね?」
そんな私の説得は無駄な事だった。
「じゃあ今エッチして飯食ってまた夜エッチしよう!」
あぁ…それって一番最悪のパターンでしょ。
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