『-one-』

二人暮らし P1


 プロポーズされてラブラブ絶頂期の私達には怖い物なし!のはずが…とって怖い存在が約二名。

 竜ちゃんと美紀(私の両親)

 二人で新年の挨拶に行った時の事。

「で、いつ結婚するの?」

 能天気なお母ちゃんの一言に陸は飲んでたお酒を吹き出した。

「い、いつって…今はまだ仕事が…」

「結構真面目なのねぇ」

 お母ちゃんの天然の攻撃にさすがの陸もタジタジ。

 陸には花屋をやりたいという夢があってその為に資金集めでホストを続けている最中。

「真面目ってより頭かてーんだよぉ!こいつは!」

 挨拶来た日に急に仲良くなってしまったお父ちゃん。

「ホストでも構わないって!なぁ陸!」

 お父ちゃんに肩を叩かれてまたお酒を吹き出した。

「り、竜さん…」

「あ、そうだぁ!」

お母ちゃんが嬉しそうにポンッと手を叩いて満面の笑みで私達を見た。

「一緒に暮らしなさいよ!結婚はまだでもいいじゃない!」

 娘に同棲を勧める親がどこに…ってここにいるか。

「どうせ泊まったりしてんだろ!」

「ちょ、ちょっとぉ…」

 さすがに恥ずかしくなって来て二人の顔を睨んだ。

「家賃も払わなくていいぞ?」

 竜が麻衣の顔を見てニヤリと笑えば

「毎日、麻衣の手料理が食べられるわよ?」

 美紀が陸の顔を覗きこむ。

「いい加減にして!一緒に暮らすなんて無理!」

 何て親なの!子供をそそのかして同棲を勧めるなんて二人で暮らすなんてまだ早いし考えた事もんかあったのに。

「今度余計な事言ったら、もう来ないからねっ!」

 二人を睨み付け言い放つと二人共私の方を見ていない事に気が付いた。

 ったくどこ見てんの…よ…

「麻衣、ひどいよ…」

 泣きそうな顔の陸の手からグラスが滑り落ちた。

「あ〜ぁ。陸くん可哀想!」

「こんな指輪貰っといてなぁ?」

 あんた達が余計な事言うからこんな事になるんでしょ!

「り、陸?今のはさ…ほら、勢いっていうの?」

 グラスを拾って濡れた床を拭きながら何とか言い訳しようとするけど陸の顔は泣きそうな顔のまま変わらない。

「俺とは一緒に暮らせないんだ…」

 相当ショックだったのか目の焦点が合ってないし…

「違うって!突然だったし、びっくりしたんだって」

 二人がクスクス笑いながら私達のやりとりを見ているのが分かると陸の手を引っ張って自分の部屋に入った。

「陸?機嫌直してよぉ」

 座り込んだままこっちも向いてもくれない。

「いいよ…結婚しても別居なんだよ」

 ますます落ち込んでるし。

「そんな事ないって、一緒に暮らしたいって!」

「ほんとっ?」

 って単純過ぎるんだってば…何でさっきまで死んだような顔してたのにもう目をキラキラさせて少女漫画みたいになってんの?

「結婚したらね!」

「っだよ!ケチ!麻衣は俺の事愛してないんだ。それとも結婚するまでは他の男と遊ぶつもり?」

 今度は頬を膨らませて怒っている。

「違うって!」

「じゃあ一緒に住も?俺の部屋に来いよ」

 いつの間にか私の体を抱きしめて髪を弄りながら耳元でセクシーな声で囁いた。

「俺、一分でも一秒でも長く麻衣と居たいんだ」

 陸はずるい。

 私が断れないの分かっててやってる。

 結局その日、私達の同棲が決まった。

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