『-one-』
どーも中塚です P5
(あーもぅ!やっちゃったぁ!)
麻衣は電車を降りると階段を駆け上がった。
息を切らせながら急ぐ。
もう約束の時間からは30分も過ぎていた。
時間に余裕を持って家を出た麻衣だったが駅に着いて改札を通ろうとした時に鞄を持っていない事に気が付いた。
慌てて駅員に話をして次の駅まで鞄を取りに行っていたのだ。
(どうしよう…もう帰っちゃってるかも)
改札を通り南口を出てキョロキョロと辺りを見渡す。
名前を聞くよりも見た目の特徴を聞くべきだったと後悔する。
一人で立っている男性はたくさんいる。
その中でどれが中塚さんなのか分からない。
(声の感じからすると優しそうな人よね…)
年はそんなにいってない気がして自分と同じくらいの年齢の人を探す。
(あ、あの人かも!)
時計の下で一人で立っている男性を見つける。
背が高くてがっしりしてて優しそうな顔だちが格好いい。
あの人が中塚さんだと根拠のない自信を持つと少し前髪を整えて服を調える。
(これって…ドラマだと運命の出会いだったりするんだよね)
少しドキドキしながら麻衣は歩き始めた。
「キャッ!」
歩き始めた途端後ろから腕を引っ張られてバランスを崩した。
転びそうになった麻衣を誰かが後ろから支える。
長い手がしっかりと麻衣の体を支えて男の人と分かるその体からはいい匂いがした。
(なんか…ホッとする)
あまりに優しく抱えられて麻衣はウットリとする。
耳の近くにある相手の胸の音の速さに合わせるように麻衣の胸の音も徐々に早くなる。
「遅刻したからお仕置きするよ?」
「へっ!?」
聞き覚えのある声が頭のすぐ上から聞こえた。
それを確かめるように恐る恐る顔を上げるとあの悪がきのような笑顔の陸がいた。
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