『-one-』

どーも中塚です P6



「な、な、ななな…」

 言葉にならず思わず指を差す。

 陸は少し口を尖らせながら麻衣を抱きしめる腕に力を入れた。

「麻衣ひどいよ。ずっと待ってたんだよ」

「ちょ、ちょ…」

「なぁに?でも麻衣可愛い〜俺の腕の中にすっぽりだね!」

「は、は…離れて下さいっ!」

 麻衣は力いっぱい陸の腕を振り払った。

 そして陸を突き飛ばすと睨みつけた。

「麻衣、ひどいよ?俺ずーっと待ってたて言ってるでしょ」

「え?あ、あの…ごめんなさい」

 泣きそうな顔をして俯く陸に思わず謝ってしまった。

(ハッ!?何で謝ってるの?)

 つい相手に乗せられてしまった事にイラッとしながらも気持ちを切り替える。

 さっきの男の人と振り返るともうその姿はなくなっていた。

(あぁ…私の中塚さん)

 早くしないと本当の中塚さんが帰ってしまうと麻衣は焦り始めた。

「すみません。私は急ぎの用事があるのでこれで…」

 これ以上関わりあいたくないとばかりに冷たく言う。

(こんなとこでホストに会うなんて最低)

 それも昨夜の失礼なホストでその上今日も訳の分からない事を言って抱き着いてきた。

 麻衣は少しでも離れようと身を翻して歩き出す。

「K駅南口時計の前に10時」

 後ろから声を掛けられた。

 そのセリフには覚えがある、けれどその声の主がどうしてそれを知っているのか分からない。

 陸は振り返った麻衣に向かって歩き出した。

 目の前まで来ると肩に手をおいてチュッと額にキスをする。

「どーも中塚です」

 その笑顔は今まで見た中で一番の笑顔だった。


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