『-one-』

どーも中塚です P4


(遅い…遅い…)

 10時15分。

 何度時計を見ても10時を過ぎている事は間違いない。

 陸は道端に停めた車の中から駅の方を見ていた。

 電話を切った後すぐにシャワーを浴びた。

 いつもより念入りに髪をセットして服を選ぶのにも20分も掛かって何度着替えなおしたか分からない。

 コン、コン、コン−

 イライラしながら窓を叩いてみてもまったく姿を現さない。

(何やってんだよ…)

 女にこんなに待たされるのは初めてだったが帰ろうという気はまったく起こらない。

 まるで初めてのデートの時のようにドキドキしている。

 自分が中学生にでも戻ったんじゃないかと思うくらいだった。

 特にホストになってから女性と待ち合わせするのに胸をときめかせた事はほとんどなかった。

(ホストの俺が一目惚れか…)

 まさか自分が一目惚れをするとは思わなかった。

 それも相手は店に来た客。

 顔もスタイルもまぁ可愛いけど飛びぬけてるわけではない。

 でも初めて店の前で会った時の口を尖らせている顔に心を鷲掴みにされて、店の中でコロコロ変わるあの表情に打ち落とされた。

(やっぱ…すげぇ可愛いかも)

 思い出すたびにどんどん自分の中の気持ちが膨らんでいく。

「麻衣…」

 思わず声に出して名前を呟いた。

 そんな自分に恥ずかしくなっているとようやく駅から走って出てくる姿が視界に飛び込んできた。

 陸の心臓はドクンと大きく鳴った。


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