『-one-』

Happy New Year P4


 駅とだけしか言われてないけど一番近い駅でいいよな。

 5分で駅に着いてゆっくりとロータリー内へと入って行くと先に気が付いた麻衣が手を振っている。

 麻衣の前に車を止めて急いで降りた。

「早かったねぇ!」

「早かったねぇじゃなくて!朝からどこ行ってたの?って…この荷物なに?」

 夢中になって麻衣の事しか見えていなかったがよく見ると麻衣の周りには数え切れないくらいの紙袋の山。

「福袋!」

 満面の笑みそして渾身のVサイン。

「これ…全部?」

「うん!」

 女は買い物が好きってのは分かってる。

 だけど…これはどうなんだろう…いくらなんでも買いすぎなんじゃないのか?

「ここまでは何とか持ってきたけどさすがに疲れちゃった」

 袋の山を見て呆然としている陸の事などお構いなしで後部座席を開けると袋を次から次へと押し込んでいる。

「やっぱり陸の事起こして連れて行けば良かったなぁ」

「それってただの荷物持ち?」

 荷物を積み込み終わった麻衣がエヘッと笑った。

 麻衣…そこに愛はあるのか?

 新年早々からこの仕打ち…陸はさっきまでの自分の心配は何だったんだろうとため息を吐いた。

「早く帰ろうっ!一応陸のもあるんだよ」

 い、一応かよ…。

 陸は悪気がない無神経な麻衣の言葉に軽く傷つきながら車を走らせた。

 駐車場に着くと陸は俺が持ってやるよと言い出したのはいいけれど三秒で後悔した。

 何が入ってるのか分からないけれど異常に重い。

 おまけに手に持ち手が食い込んで痛い。

 これだけの量を一人で駅まで持って帰って来た麻衣の執念に頭が下がる。

 しかも当の本人も両手に袋を抱えているにも関わらず元気いっぱいトークも絶好調だ。

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