『-one-』

田口家へようこそ! P7


「じゃあ、美紀行ってくるよ」

 キスをした頬に手を触れて微笑み合っている。

 見てるこっちが恥ずかしくなる…。

 でもすごく自然でスマートでかっこいいと思えるのはどうしてだろう。

「じゃあ、陸くんも一緒に」

 え?俺も!?

「陸も連れて行くの?」

 麻衣が慌てている。

「あの、どこへ…?」

「竜ちゃんの仕事知りたいでしょ?」

 お義母さんの意味深な言い方に思わず頷いてしまった。

「別に今日連れて行かなくてもいいでしょ?」

 麻衣だけが必死に俺を引き止めようとしてくれてる。

 そんなに行かせたくない所?

 でも俺はお義父さんの仕事も気になるし…。

 まだ話さないといけない事もあるんだ。

「麻衣大丈夫だよ。お義父さんと一緒に行って来るよ。」

 納得いってない顔をしている麻衣に笑ってもう一度大丈夫だよって言ってあげた。

「気をつけてね…」

 最後に不安そうに麻衣が呟いた。

 麻衣には大丈夫と言ったもののやっぱり不安だった。

 なぜかタクシーが家の前で待っていた。

 夜に出勤でしかもタクシーそれはまるでホストみたいだと思った。

『Men's pub NAUGHTY BOY』

え、えっ?メンパブ?

 店の前にタクシーが止まると普通に中に入って行った。

 暗すぎない店内は間接照明がうまく配置されていて雰囲気がいい。

 カウンターと少しテーブル席がある。

「竜さん、おはようございます」

 まだ時間が早いせいか客は居なかったがカウンターの中の人が頭を下げて挨拶をした。

「おぅ!こいつの分も一緒に出して」

 すぐに酒が出て来る。

「飲めないわけないだろ?」

 グラスを持たされて俺も口を付けた。

「この店どうだ?」

「えぇ…雰囲気のいいお店ですね」

 また昼間のように顔色も変えずに頷いている。

 当たり障りのない答えは良くなかったんだろうか…。

 その後は黙って酒を飲んだ。

「次、行こうか」

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