『-one-』
田口家へようこそ! P4
「麻衣、おかえり」
その声に思わず立ち上がった。
部屋の入り口にお義母さんと隣には長身の男の人が立っている。
この人がお義父さんだよ…?
不思議に思うのも無理はないと思うすごく若く見えるし結構イケメン。
「ただいま。彼連れて来たよ。」
「初めまして、中塚陸です。」
ジッとお義父さんと目が合って緊張が最高潮に達した。
「初めまして、麻衣の父です」
(うわっ、声渋っ!めちゃめちゃかっこいい!)
お義父さんを囲むように座った。
渋くて格好いいお義父さんに可愛らしくて少し天然っぽいお義母さん。
すごい組み合わせだなぁ…。
「だいたいの事は麻衣から聞いてるよ」
「はい…」
始まった。
きっと色々と尋問されるんだよな…。
「ご両親はいないって聞いたけど?」
「両親は僕が中学の時に事故で亡くなりました」
「そう、大変だったね。」
「いえ施設に預けられたけれど、皆さんよくしてくれました」
あの頃は寂しいとは思ったけど辛いと思った事は一度もなかった。
だから今でも胸を張って言える。
「ホストにはどうして?」
絶対に来ると思っていた質問。
娘がホストと付き合っていていい顔する親なんているわけない。
「高校を卒業して施設を出てどうしていいか分からない時に今のオーナーに拾われました。」
反応が気になってジッと見た。
カップを持ってずっと同じ調子で頷いている。
顔色も変わらないし何を考えているのか分からない。
それなのにこっちに嫌な印象を与えないのは社長だから?
ますますお義父さんがどんな人なのか興味が湧いた。
「いずれはお花屋さんやりたいんだって!」
静かな雰囲気を破る元気な麻衣の一言。
麻衣が俺の手を握ってくれた。
まるで大丈夫だよって言ってくれてるようで少しホッとする。
「花屋か、何でまた?」
「両親が花が大好きだったんです」
お義父さんが初めて笑ってくれた。
良かった…
「じゃあ、ホストは辞めちゃうんだ?」
お義母さんの質問に頷くとびっくりしたように目を見開いた。
「えぇーっ!もったいない!こんなにかっこいいのに」
お、お義母さん?
予想外の返事に思わず固まる。
「美紀!俺以外の男にかっこいいとか言うな!」
え、えぇーーーっ!
今度はお義父さんに視線を移すと初めて顔色が変わって怒った顔をしている。
「竜ちゃん!義理の息子になるんだしいいじゃない」
息子だって…。
そのたった一言が嬉しくて顔が緩んでしまう。
「ダメだ!お前も美紀を見てニヤニヤすんじゃねぇよ!」
今度は俺の方を見て怒り出した。
え…?
そういうつもりでニヤニヤしてたわけじゃなかったんですけど。
「俺の事だけ見てろ。分かったか?」
二人は見つめ合いお義父さんはお義母さんの頬を撫でている。
ちょっと待って。
えぇー?だって夫婦だろ?麻衣の両親だよな?
いくら見た目若いからって子供の前でこれって…。
「お二人さんそこまでにしてくれる?陸がビックリしてるんだけど」
二人が不思議な顔して俺の事を見るから思わず麻衣の顔を見てしまった。
「いい年して恥ずかしいでしょ?」
麻衣は気持ちを察したのか呆れたような顔で笑っていた。
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