『-one-』

サンタが僕等の店にやってくる P4


 ほとんど空になった籠を持つ麻衣を誠が振り返り声を掛ける。

「さあ、最後のテーブルですね」

「も、もう籠いらないから私戻りますね」

 誠の手にプレゼントが握られているのを確認して麻衣は足を止めた。

「サンタはプレゼントを届けるのが仕事ですよ?」

 楽しくて仕方がない様子の誠に改めてハメられたと泣きたくなった。

 もう最後のテーブルはすぐそこ。

 まるで計算されたかのようなテーブルの回り方に麻衣は溜息が出た。

「メリークリスマス!」

「あら、誠さん可愛らしいサンタさんを連れてるのね、ねぇ陸?」

 さっきシャンパンタワーの前にいた年配の女性が楽しそうに微笑むと隣にいるホストが顔を上げた。

「ほんとだ。まるでクリスマスの妖精みたいだ」

「陸ってば…本当に可愛い子を見ると目がないのね」

 少し拗ねたような口調で女性が言うと陸はクスッと笑った。

「そんな事を言う悪い子はプレゼント貰えませんよ?ね、サンタさん?」

 陸がサンタの方を見て同意を求めると下を見ていたサンタが恐る恐る顔を上げてチラッと陸の顔を見た。

「なっ…」

 さっきまでのクールな表情の陸が動かなくなった。

「貴女には特別に私からもう一つプレゼントがあるのですが?」

「あら?何かしら」

 誠に話し掛けられたせいか運良く陸の動揺した顔は見られずに済んだみたいだ。

「久し振りに二人きりの時間を…」

「でも…陸に悪いわ?」

 名前を呼ばれて陸はハッとした顔で女性に顔を向けた。

「い、いえ…少しだけなら我慢しますよ?」

 客の手を握ってから立ち上がると誠と入れ替わった。

「では陸…こちらのサンタさんを控え室に案内して下さいね」

 誠は陸にそう言うと鍵をポケットに入れた。

「お疲れ様でした。可愛いサンタにも素敵なクリスマスを…」

 誠が麻衣を見て微笑んだ。

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