『-one-』

カリスマホスト!? P6


 いつ話を切り出そうかとずっと悩んでいると突然陸さんの声がして顔を上げた。

「悪ぃ、タクシー呼んで?」

 見れば麻衣さんは陸さんの膝の上ですっかり夢の中って感じで気持ちよさそうに眠っている。

 タクシーを呼んで戻って来てもまだ膝枕をしたままだった。

 陸さんは表現が難しいぐらいの優しい笑顔で見つめ時々髪を撫でている。

「あ、あの…」

 今だ…と話しかけようとした時にタイミングよくタクシーが来てしまった。

「麻衣の荷物頼むな」

 悠斗さんはバッグを持った。

 陸さんは眠ったままの麻衣さんをソッと抱き上げた。

 マジっすか…。

「んっ…陸?」

「起こしちゃった?タクシー来たから帰ろうな」

 麻衣さんは小さく頷くとまた目を閉じて陸さんの胸に顔を埋めるように眠ってしまった。

 俺は二人をボーッと見ている事しか出来なかった。

 慣れた手つきで麻衣さんをタクシーに乗せると陸さんは俺を見た。

「和哉、付き合ってもらって悪かったな」

「い、いえ…」

 そうだ…今がチャンスだ…。

「あ、あの…」

 そこまで言いかけたが上手く言葉が出てこなかった。

 視線を麻衣さんの方に向けると陸さんは理解したような顔で笑った。

「あぁ…酒癖が少し悪くてな。今度は素面の時に相手してやってな」

「まぁどっちの時でも可愛いっすけどね」

 悠斗さんが隣から口を挟んで思わず大きく頷いた。

「可愛いだろ?手出したらどうなるか分かってるよな?」

 ギロッと睨まれて慌てて首を横に振ると冗談だよと笑われた。

「そう遠くない将来に俺の嫁さんになるから、宜しくな」

 へっ!?

 驚いている俺に構わずタクシーに乗り込むとそのまま行ってしまった。

 嫁さん?

 カリスマホストなのに…嫁さん!?

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