『-one-』

どーも中塚です P2


「…はい」

 ボタンを押しながら男だったらどうしようと心配になった。

「あー!良かったぁぁ!」

 繋がった早々鼓膜が破れるくらいの大声で叫ばれた。

 陸は顔をしかめて携帯を遠ざける。

 起き抜けの体には少々堪えた。

「あの…」

 陸が話し掛けようとした途端電話の相手は陸の事を無視してすごい勢いで捲くし立て始めた。

「あの、それ私の携帯なんですっ!拾ってくれたんですね!本当に助かったぁぁ。ありがとうございますぅ!っていうかどこに落ちてました?」

 ここで息継ぎでもしたのか一瞬間が出来る。

「ほっんとどこに落としたのかも全然っ分からなくて困ってたんですよ!電話しようにも自分の携帯番号なんか覚えてないし携帯の契約書?そんなの取ってるわけないし…ってまぁそれはいいんですけど…」

 また間が出来る。

「ようやく番号が分かったんで電話出来ましたーー!でもよく考えてみたら携帯の請求書に書いてあったんですよぉ!後で気付いてビックリで!」

(クックックッ…)

 陸は笑いが堪えきれずに腹を抱えて肩を揺らした。

 それは間違いなく麻衣の声だった。

 陸はの脳裏には今どんな表情で話しているのか簡単に想像出来た。

「あのぉー?」

 顔から離していた携帯から声が聞こえた。

 ずっと黙っていたせいか心配そうな声になっている。

「あぁ…すみません。少しビックリして…」

 笑いを我慢しながら返事をした。

(俺だってバレたか?)

 電話の向こうの麻衣は黙り込んでしまった。

 だが陸の心配をよそに麻衣は能天気な声を出した。

「でーすーよーねー!こんな朝早くから電話したらビックリですよねぇ!ほんっっとにごめんなさい!」

(プッ…!)

 何が面白いってすべてが面白かった。


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