『-one-』

未来への約束 P5


「どこ、行くの?」

 次の日は陸の車でドライブをしていた。

 まだ行き先を教えてもらってない私はさっきから陸に問いただしている。

「すぐに分かるよ」

 隣で嬉しそうに運転している。

 暫く走ると見覚えのある景色になって来た。

「陸、もしかして!」

「ここは外せないでしょ?」

 車を停めると陸は助手席のドアを開けて私の顔を見て笑った。

「どぉする?」

 私は迷わず両手を陸に差し出すした。

 陸は私を持ち上げて下に降ろしてくれた。

「ちゃんと覚えてんじゃん!」

 手を繋いで歩き始めた。

 あの時は夏が来る前で少し湿っぽい風だったけど今は冷たくて乾いた風が頬を撫ぜた。

 店に入るとあの時と同じセリフを陸が言う。

「予約した中塚です」

 何だか嬉しくなって陸の顔を見ると陸も嬉しそうに笑っている。

「さすがにテラス席は寒いから今日は中ね?」

 窓際のテーブルに案内されると今日もすぐに料理が運ばれてきた。

「この前よりもおいしい気がするね」

 デザートを待ちながら笑った。

「きっと、前よりもずっと楽しいからだよ」

 一緒に微笑んでくれる。

「あの時も麻衣の事好きだったけど、正直こんなに好きになるとは思わなかった」

 コーヒーを飲みながら陸は思い出話を始めた。

「私だってまさか年下のホストを好きになるなんて」

 陸が少しむくれた顔をした。

 だって本当にあの時は想像もしてなかったもん。

「あの後、急に俺の事無視して会ってくれなくなった時はすげー辛くて」

 あぁ…うん。

 やっぱり年下のホストと恋愛なんか出来ないって思って避けてて…それで美咲に頼まれてお使いに行ったのが陸の部屋だったんだよね。

「麻衣知ってた?美咲さんがワザと麻衣に来させたんだよ」

「え?そうなの?」

「ってほんとは俺がお願いしたの。どうしても会いたかったから」

 そうだったんだ…全然知らなかった。

 あの時から美咲や誠さんは私達の為にいろいろしてくれていたんだ。

「ごめんね?」

「ううん、だってあの事がなかったらきっと付き合ってないよね?」

「また携帯落として行った時にはもう運命だって思った」

 陸が思い出して笑った。

 確かに…最初も携帯落としてここでご飯食べてまた部屋に携帯落として付き合う事になって…。

「そうだ!まだこのままなんだよ?」

 携帯を開いて見せた。

「そろそろ新しいのにしてあげよっか?」

 陸はポーズを作って茶化してた。

 もうずっとずっと前の出来事のような気がする。

 それぐらい私達色んな事があったんだね。

 いつの間にか二人でいる時間は穏やかなものになっていた。

 最初の頃は不安で不安で押しつぶされそうになったり変に気負いすぎて空回りした。

 今は隣で笑ってるのが当たり前だね。

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