『-one-』

お見合い!? P7:side陸


 結局俺は心配で仕事まで休んで麻衣を店まで送り届けた。

 麻衣もこのまま待っててなんて甘えるもんだからつい俺も一時間で出ておいでと熱いキスをして送り出した。

 麻衣が店に入ってからそろそろ一時間。

 俺は麻衣を店の外で待つために車を降りた。

(お?あんの…ぶぁーか!)

 車を降りると店の入り口から麻衣の腰を抱えるようにしてこの前の男が店から出てきた。

 慌てて二人に駆け寄った。

「すんません、うちのが世話になったみたいで」

「あーー陸だぁーーっ」

 声を掛けると俺に気付いた麻衣が抱き着いて来た。

(飲んだのかよ…)

 酔っ払っている麻衣を見て頭が痛くなってきた。

 だが甘えるように抱きついた麻衣の頭を撫でながら男を睨みつけた。

 相手は全く動じる様子もない。

「あれ?もしかしてoneの陸?」

「そうだけど」

「何ー麻衣ちゃんの彼氏ってお前だったんだ」

(うぜー!まじうぜー)

 初対面なのに馴れ馴れしい態度に腹が立った。

「人の女の名前勝ってに呼ぶなよ」

「ホストのくせに固い事言うなよ」

 妙にかっこつけて鼻で笑うのがカチンと来たがグッと堪えた。

「麻衣は別なんだよ」

「もしかして本命?」

「おまえに関係ねーし」

「陸ぅ〜眠い〜」

 緊張感のない声に奴がクスッと笑った。

 これ以上奴が麻衣を見ているのが許せなくて抱きかかえると車の助手席に乗せた。

「すぐ戻ってくるから」

 眠そうな麻衣に声を掛けた。

「もうアイツに関わるなよ」

「まぁ約束だから?おまえあの子どーするつもり?ホストしかやった事ねーんだろ?噂だと誠さんの弟分だって?」

「好きな女の為なら何でも出来るんだよ」

 そいつはびっくりした顔で俺を見た。

「へぇ…お前…あの女の為に辞めれんの?」

「くだらねー事聞くなよ」

 そしたら急にバカにしたような笑いが消えて俺の事を正面から見据えた。

「あの女、絶対に酒飲まないって言ってたのに飲まないと彼氏が二度とホスト出来ないようにしてやるって言ったらさ迷わず飲んだよ」

 車で泥酔してる麻衣を振り返る。

(ったく…なんでそんな事すんだよ…)
「正直羨ましいよ。ホストなのにそんなに愛されて」

 それだけ言い残して店の中に戻って行った。

 車に乗りこんで麻衣を見ると幸せそうな顔をして眠っている。

「ったく…このおバカちゃんは…」

 俺がホストだと悩んだこともあるくせにあんなくだらない条件でこんなになるまで飲んだ麻衣が愛しかった。

 陸は麻衣の右手を握ると車を発進させた。

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