『-one-』

お兄ちゃんとご対面 P5


「いらっしゃいませ」

 今日は久しぶりにONEに顔を出した。

 あれからお兄ちゃんも仕事があるからってすぐに出て行った。

 陸から変な話も聞かないし余計な心配だったかなと麻衣はようやくホッと胸を撫で下ろしていた。。

「麻衣さん、ご無沙汰でしたね?」

「悠斗くん!新人さんが入ったんだって?」

「えぇ…なかなかのイケメンなんですよ」

 どんな人だろ、楽しみだなぁ。

「久しぶり」

「あれ?元気ないね」

 すぐ陸がテーブルに来たけどちょっと元気がない。

「最近、新人に押され気味で落ち込んでるみたいですよ?」

 一緒についた悠斗くんが教えてくれた。

 陸が押され気味なんて何だか信じられないんだけど。

「そんなにかっこいいの?」

「麻衣まで…俺を捨てるのか…」

 いや…だからここ仕事場だしそんな悲しそうな顔してこっち見られても困るでしょ?

「麻衣さんが陸さん以外の人に目がいくわけないじゃないですか〜」

 悠斗くんのフォローで陸がほんとに?って顔で私を見た。

「そうそう、私は陸がいるから来てるんだよ?」

「麻衣、ありがとな」

 久々のセクシーボイスとその瞳に体の奥がキュンとなった。

(キス…したいなぁ)

「麻衣さん、新人ですよ」

 陸の顔を見つめていると悠斗くんに声を掛けられてハッとした。

 テーブルの向かいに立つ男の人の方を見。

 え…?

「また会ったね…運命かな?」

 う…そ…。

「そんなに見つめられたら、照れるだろ?」

 なんで…。

「麻衣?この前急に帰ったから怒ってるのか?」

「ま、麻衣さん!ちょ、ちょっと…」

 悠斗くんに横から突付かれて指差す方を見ると陸がグラスを握り締めて震えて私を見ている。

「ち、ち、違うの!」

「違わないだろ?俺と麻衣は他人じゃないだろ?」

「ま、麻衣…?」

「麻衣さん…」

 陸は信じられないって顔で私を睨みつけている。

 あーもぅ!だからこの人は嫌なのよっ!

「あ…店の人には秘密にした方が良かった?」

「こんな所で何やってるの!!!」

 私の怒鳴り声でお店の中が一瞬静まり返った。

「ま、麻衣さん。声大きいですよ」

 悠斗くんになだめられて座らされた。

「あれ言わなかったっけ?」

 言ってないじゃん!飲み屋だって言っただけじゃん!

「何でホストなの!何でココで働いてるのっ!」

「金なかったから」

「だからって他にもあるでしょ!」

「彼氏と同じ店はまずかったかな?」

 私の側に来て耳元で囁くと陸を見てニヤッと笑う。

 今度は陸の方へ行き私にも聞こえるように小さな声で囁いた。

「麻衣はいい女だろ?」

 陸が怒って立ち上がると同時に私の大きな声が店中に響き渡った。

「お兄ちゃぁぁん!!」


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