『-one-』

Let's Drive P3


「ウィンカー出して?」

 泣きそうな顔で俺を見る。

 何も言わなくても言いたい事が分かった。

「右側のレバー上に上げて?」

 ようやく点滅。

「じゃあ左右確認して…」

 思わず自分も身を乗り出して確認。

 って俺なんでこんな汗かいてんの?

 いつの間にか力いっぱい拳を握ってるし…。

「り、陸?左はいい?」

「大丈夫だよ。ゆっくりハンドル左に回してごらん」

 ん?思い出したのか?

 何だかスムーズに車が動き始めた。

 まぁ…相変わらずゆっくりだけど。

「うわぁっ…ハンドル戻して!真っ直ぐ!真っ直ぐ!」

 はぁっ…
びびった。

 歩道に乗り上げるかと思った。

「じゃあこのまま真っ直ぐ走ろうか?」

 少し慣れて来たのかな?

 何とか制限時速まで出して走れるようになって来た。

 信号の度に大きな溜息を吐いてるけど。


 何とか周りのスピードに合わせられるようになったし…。

 じゃあそろそろ。

「じゃあ次の信号右に曲がって?」

「み、右…」

 え…あれ…?

「麻衣?今の信号だけど…?」

「…無理」

 は?びっくりして顔を見る。

「大丈夫?」

 思わず聞いてしまうくらい顔色が悪い。

「ひ、左にしよ?」

 そ、そうだな…右折は難しいかもしれないな。

「じゃあ次の信号左に曲がろうか」

 ウィンカーも出したし…うんうん…いい感じだぞ。

 いっぱいいっぱいの麻衣の為に左右の確認だけはしっかりしてあげる。

「大丈夫だよ」

 まぁ…かなりゆっくりだけど合格かな。

「り、陸…どうしよう」

 泣きそうな声を出している

「どうした?」

「2車線ある…」

 …再び絶句。

 そりゃ2車線の所もあるさ。

「とりあえず左側走って」

 急に車の数が増えて麻衣の緊張が一気に高まってしまった。

 指の関節が白くなる程力いっぱいハンドルを握っている。

「あ、前に路駐いるからウィンカー出して右に出て」

 それはハードルの高い課題だった。


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