『-one-』

Let's Drive P4


 右折も出来ないのに…車線変更なんて夢のまた夢だった。

 車はそのまま路駐の車の後ろに止まった。

「りぃくぅ〜っ」

 あ〜ぁ…全くしょうがないな。

 シフトをパーキングに戻してサイドブレーキを引いて麻衣のシートベルトを外した。

 麻衣の頭を抱き寄せて胸に押し付ける。

 胸の辺りがジワッと熱くなった。

 肩を震わせて泣いている。

「大丈夫、大丈夫」

 きっと極度の緊張から開放されて安心したんだと思う。

 優しく背中を撫でてあげる

 落ち着いた頃席を入れ替わった。

 助手席に座ってもまだしゃくり上げている。

「大丈夫!ちゃんと頑張ったじゃん」

 俺の左手はしっかりと麻衣の右手を握っている。

 来た道を行きの半分以下の時間で部屋に戻った。

「落ち着いた?」

 ソファの上で抱っこした麻衣は頷いた。

 目は真っ赤に腫れてしまっている。

「どうして運転するなんて言い出したの?」

 今まで運転してないのに急にそんな事言い出すなんてきっと何かあるはず。

 どうしても理由を話さない。

「麻衣?」

 少し強めの口調で聞くとボソッと答えた。

「たまには陸のお迎えしたい」

 今のすごい可愛い…。

 泣き腫らした麻衣の顔を両手で挟んだ。

「ありがとね。でもタクシーで帰るのも仕事のうちだよ。」

 その答えじゃ納得いかない様子で口を尖らせて俺を見ている。

「帰ってきて麻衣の寝顔見るのが楽しみ何だけど?」

 今度は照れくさそうに笑った。

 それも本当の理由だっけど…。

 一番の理由は麻衣が迎えに来るまで俺の心臓がもたなそうだから。

「麻衣、ありがとね」

 そのまま顔を引き寄せてキスをした。

「ちゃんと運転出来てた?」

 不安そうな顔で俺を見た。

「大丈夫、曲がったりとかはまだ難しいけど、真っ直ぐなら大丈夫だね」

 嬉しそうに目を輝かせた。

「じゃあ実家に帰る時は私が運転してあげるね!」

 いや…それは…

「ね?」

 いや…だから…それは…そんな期待に満ちた目で見るなぁ。

「俺は可愛い麻衣を助手席に乗せて走るが好きなんだけど?」

 抱き寄せて耳元で囁いた。

 少し口を尖らせてから嬉しそうに笑って俺に抱きついた。


 はぁ…良かった…長生きできそう…。


end

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