『-one-』

元カノ現る P11


「お前が浮気したんだよな?」

 陸が店から出てきて二人の間の沈黙を破った。

 私の横に立つと目の前に立つ元カノの事を冷たい視線で見下ろした。

 元カノは悔しそうに陸を睨みつけている。

「陸の事好きだったんじゃないの?」

 私の言葉にカッとしたのか元カノが大きく手を振り上げた。

 私は咄嗟に身構えたけど体に衝撃はなく見ると陸がその手を掴んでいた。

「麻衣に怪我させたら女でも許さねぇからな!!」

 陸のものすごい怒鳴り声に元カノの表情が凍りついた。

「どうして陸の事が好きなのに…浮気したの?」

 睨みつけている陸が彼女の手を振り払うように離して代わりに答えた。

「他の学校の奴にナンパされてカッコいいからそっちいったんだよな?」

 びっくりしたような顔で彼女が陸の顔を見た。

「お前が友達と喋ってんの聞いた」

 苦虫をかみつぶしたような顔をしたきり何も喋らなくなってしまった。

 やっぱり陸が浮気するわけないんだよね。

 それにしても…

「陸より…かっこいい人なんているの?」

 二人がびっくりした顔して私の事を見ている。

 え?あれ?なんか微妙な空気…。

 もしかして…私今声に出して言った…?

「あれ?私ってば…今心の中で…?」

 陸が肩を揺らしながら笑っている。

「やっぱ最高!」

「え?何が?」

「麻衣っ!すっごい嬉しい!大好き!」

 陸が満面の笑みで力いっぱい抱きついて来た。

「ちょ、ちょっと!離れてってば!」

 この状況を考えてよぉ!

 元カノが見てるのに!

「やだ!こんな可愛い事言ってくれるのに抱きしめてキスしなくちゃバチが当たる」

「ストップ!大人しくしないとキスおあずけっ!」

「ま、麻衣〜」

 泣きそうな顔になってしゃがみ込んだ。

「何よ、ばっかみたい…。ホストのくせに何でそんなかっこ悪い事してんの?」

 彼女がバカにしたような声で言った。

「え?」

「そんな甘えた声出してホストのくせにみっともないじゃない!」

「麻衣の前ではホストじゃねーし俺のかっこ悪いとこも見せるよ?そりゃ一番かっこいい俺を見てて欲しいけど付き合ってれば甘えたい時も泣き言言いたい時もあるだろ」

 陸…そんな風に思っててくれたの?

 元カノが向きを変えて歩き出した。

「ちょ、ちょっと…」

「帰ります。仲良くやって下さい」

「え…?」

「…私そんなかっこ悪い男嫌なんです」

 そう言って歩いて行ってしまった。

 なんか呆気なくてポカンと口を開けて彼女の後姿を見送った。

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