『-one-』

元カノ現る P12


「麻ー衣。俺ってそんなかっこいいの?」

 陸がニコニコしながら下から見上げて来る。

 それはまるで犬が尻尾を振ってご主人様の顔を見上げてるような顔。

 元はといえば陸が元カノとかそういう事を言わないからいけないんだから!

「帰るよ。立って!」

 甘えて足に擦り寄っている陸を耳を摘んで立たせるとタクシーに乗せた。

「シャワー浴びて頭スッキリさせてきて!」

 部屋に着くと陸をお風呂に放り込んだ。

「はい、お水と薬。」

 ソファに座ってタオルで髪を拭いている陸に渡した。

「麻衣…あのさ…」

「向こう向いて」

 飲み終わると私の方を見て何か言おうとしたけど私はそれを遮ってタオルで陸の髪を拭いてあげながら話をした。

「ホストだって分かってて付き合ったんだから多少の事は我慢できるよ」

 陸が小さく頷く。

「でも…見てれば普通のお客さんじゃない事がぐらい何となく分かるよ?」

「年上だし陸のお客さんよりも可愛くないって引き目感じてるんだから…あんまり他の事で不安にさせないで?」

「麻衣…」

 陸が振り向こうとするのを止めた。

 涙が出そうになってい顔を見られたくない。

「仕事以外の時は私の事だけ考えててね。他の人見ないでね。それと…同伴の時はなるべく二人きりにならないで?」

「きゃぁっ!」

 急に腕を掴まれて引っ張られると陸の背中に倒れ込んだ。

 陸は腕をしっかり持ったまま放してくれない。

「すっごい嬉しい!」

「何が?」

「俺ばっかり好きかと思ってた。こんなに俺の事好きになってくれてあんなに強い一面があるなんて知らなかった。」

「つ、強くなんかないよ…」

「麻衣の事離さない。俺がどんどん麻衣の事好きになるみたいにもっと俺の事好きにさせたい。だから今回みたいに我慢しないでもっと俺に言いたい事は言って?」

「り、陸…」

「俺そんなに弱くねぇよ?いつもこんなんだけど、前に言ったろ?麻衣の不安は俺が全部取り除くって」

 陸…やっぱりかっこいいよ。

 誰が何て言ってもホストの時もホストじゃない時も陸が一番かっこいいよ。

「だからさエッチしよ?」

「何でそうなるのー!」

「だって背中に麻衣のおっぱい当たってるもん。ドキドキしてきた」

「………」

 陸はゆっくりこっちを向くと頭を押さえて唇が重なった。

 ちゅっ…くちゅっ…

 静かな部屋に二人の舌を絡ませる音が響いて頭の中がぼやけてくる。

「麻衣…」

 囁くような甘い声で名前を呼ばれて耳を甘噛みされると全身の力が抜けてしまう。

 ゆっくり体の向きを変えて私の上に乗った陸は私の顔を見つめてたくさんキスをする。

「麻衣…俺…ねみ…」

 首筋にキスをしたまま陸は動かなくなってしまった。

「り、陸…?」

 ね、寝てる…?

 小さな寝息が聞こえてきた。

「私ってば眠気に負けちゃった?」

 勝手に盛り上げといておあずけ?

 ちょっと憎たらしくて眠ってる陸の鼻を摘んだ。

「まったく…おやすみ」

 頬にキスをして私も陸の背中に腕を回して一緒に眠りについた。

 きっと起きたら私の持て余したこの気持ちも体も十分に満たしてくれるはず。

end

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