『-one-』

元カノ現る P10


「それで?ヨリを戻したいわけ?」

 店を出て少し離れた所で彼女の方に向き直って聞いた。

 彼女は不快感を露わにして私のことを睨みつけている。

「そうよ。だから陸と別れてくれない?」

「陸は何て言ってるの?」

「………」

 何も答えない所をみると陸は拒否してるんだろうね。

「陸はヨリ戻すって言ってくれた?」

「………」

 何も答えずに下を向いてしまった。

 私だって陸が好きだからそう簡単に引き下がれない。

 いつも不安で不安で仕方がないけれど私だって陸を失いたくない、

 今こうやって話していられるのは陸の彼女というプライドが支えてくれているだけ。

「私は別れないからそのつもりでいてね」

「大人しくしてれば、このババァ!」

 彼女が唸る様な声で啖呵を切った。

 急に態度が豹変して思わず後ろに後ずさりした。

 負けそうになる気持ちをグッと拳を握って耐えた。

「脅しても無駄。私は陸の事が好きなの」

「私だって陸の事が好きなの!」

 彼女も負けじと私に食いついてくる。

「じゃあ、何で別れたの?」

「それは…」

「今でもヨリを戻したいぐらい好きなら別れなければ良かったじゃない?なんで別れたの?」

 下唇を噛んで下を向いたまま何も答えない。

 昔はどうだったか知らないけどきっと陸は浮気するような人じゃない。

 だからそういう理由じゃないはず…。 

 彼女の次の言葉が出て来るのを待った。


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