『-one-』
ホストとOL P9
「麻衣の口から聞いてみたいんだけど?」
陸は親指で麻衣の唇をなぞる。
その仕草は色っぽくて麻衣はうっとりとした表情を浮かべた。
「ほら…陸、呼べるだろ?」
低く甘い声で囁きかける。
まるでキスでもするように顔を近づけて瞳を覗き込む。
麻衣はゆっくりと唇を開いた。
「……くん」
「聞こえない」
「陸…く…ん」
「くんはいらない。呼び捨てって言っただろ?」
「…陸」
陸の色っぽい瞳と視線を絡ませるのが恥ずかしくてたまらない。
麻衣はグラスの中身を一気に喉の奥へと流し込んだ。
(ハァ…もう何なのコレ)
ようやく我に返って自分のしていた事を思い出すとボッと顔に火が点いた。
(嫌ー…もう何やってるの私。しっかりしてよ!)
ピチャッ−
「ヒャァーッ!!」
「ちょ、ちょっと!何て声出してるのよっ!」
「だ、だってぇ…」
叫び声を上げた麻衣は美咲に怒られたがオロオロとうろたえながら耳を押さえる。
耳に確かに感じた生温かい感触。
ジンジンとその部分が熱くてたまらなかった。
「食べちゃうって言ったでしょ?」
「……ッ!!」
耳元で囁かれて驚きすぎて声も出ない。
「次はここを食べちゃおうかな」
そう言いながら唇に触れる。
上目遣いで覗き込む瞳にはさっきまでの艶っぽさは消え少し潤んで悪ガキのような熱っぽい瞳に変わっていた。
唖然とする麻衣を見て陸がクスッ笑った。
(バ、バカにされてるの??)
浮かれていた気持ちがサーッと冷めていく。
「美咲!先に帰るっ!」
「麻衣!?」
麻衣は立ち上がると出口までわき目も振らず歩いた。
後ろから美咲が何度も呼ぶ声が聞こえたが気にせずそのまま店を出た。
(だから口の上手い男なんて嫌いなの!)
麻衣は店を出ると一度だけ振り返って『CLUB ONE』のドアを睨みつけた。
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