『-one-』

ホストとOL P8


「麻衣、お酒強いんだ?」

(エッ…)

 いきなり名前を呼び捨てにされてドキッとする。

(着ぐるみ…着ぐるみ…)

 心の中でぶつぶつ呟いていれば肩に回された手も気にならなくなってくる。

「いえ…あ、あの…普通くらいです」

「まだ俺に緊張してる?」

 そう言われても仕方がないほど硬い声を出していた。

 陸は空いている方の手で麻衣の髪に触れる。

 毛先を弄ぶように指を絡めている。

 そしてさっきよりも体を近付けた陸からはいい香りが漂ってくる。

「俺が怖い?」

「あ…いぇ…あのぉ…」

 陸の声に魔法を掛けられてしまったように体が動かない。

 強張った体で視線だけを動かす。

 髪を触っている指は男の人なのに細くて綺麗。

 そしてその手の向こうにチラッと見える茶色の髪はもっと綺麗で触ってみたくなる。

(はっ!?触ってみたいって…これじゃ欲求不満みたいじゃない!)

 自分の考えにゾッとしてギュッと目を閉じて首を小さく横に振った。

 そんな麻衣を見て陸がクスッと笑いながら顔を近づける。

(ん?なに…?)

 耳の辺りがふんわりと温かくなるのを感じた。

「そんな可愛い顔してると食べちゃうぞ」

「ヒィッ!」

 耳のすぐそばで囁かれて思わず変な声を上げる。

 恐る恐る顔を横に向けると陸はウィンクをして無邪気な笑顔を見せた。

「な、な…何なんですか!あなた…」

「あなたじゃなくて陸。俺のことは陸って呼べよ」

 また今までの表情に戻ってジッと麻衣を見つめている。

(何なの〜?さっきの顔と全然違うんですけど?)

 まるで幻でも見たのかと麻衣はキョトンとした。


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