『いつかの夏へ』
2
「それで、どうするの?」
話が終わってしばらく黙っていた夏が口を開いた。
「どうするって?」
「会うの?会わないの?」
当然そういう話になる事は分かっていた。
けれど私にはまだ雅樹が帰って来たという実感を感じない。
(それに私には…会う勇気が…)
夏は真剣な顔で真っ直ぐ私の顔を見た。
「会わないと真子は今いる場所から動けない」
返す言葉出てこない。
黙っている私に夏は言葉を続けた。
「いつまでも思い出を引きずって、恋もしないで、このまま年取ってくつもりなの?」
夏の言ってる事は間違っていなかった。
そんな事は私自身が一番分かっている。
「でも今さら…何て言えばいい?」
(ずっと待ってたよ?)
雅樹は高校の時にアメリカへ行った。
もしかしたら外国人の奥さんがいるかもしれない。
「私の事なんて…もう覚えてないよ」
10年という時間はあまりにも長かった。
私の中ではまだはっきりと思い出せても他の人も同じとは限らない。
「真子は雅樹くんに会いたくないの?」
(そんなの決まってる…)
「会いたいよ…」
「なら会ってきたら?」
「そんな簡単に…」
困った顔をする私を見て夏は呆れた顔をした。
「私に背中を押させる為に呼んだんじゃないの?」
目の前の友人は何もかもお見通しだった。
そう戻って来たと聞いたあの時から私の気持ちは動き始めていたんだ。
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