『いつかの夏へ』
3
「真子…頼む…誰がやったのか言ってくれ」
体の強張りが解け始めた私に雅樹は搾り出すような声で呟いた。
その時初めて気付いた。
私を抱きしめている腕も背中をさする手も震えている。
「誰がお前を傷つけた?」
私はあった事を打ち明けた。
話している間もずっと優しく抱きしめていてくれた。
ただ私が一番話し辛くて雅樹が一番聞きたくない所で雅樹は一旦私の話を止めると息が出来なくなるほどの強さで私を抱き締めた。
全部聞き終わると私を抱き上げて風呂場へ連れて行った。
「服…脱がすぞ?平気か?」
「う、うん…でも汚い…から」
「汚くない」
雅樹は丁寧に服を脱がしてくれた。
洗い場に座らせると温めのシャワーを体にかけてくれる。
「イッ…」
すごく温いシャワーなのに体のあちこちが染みて痛い。
「少し我慢してろよ?」
雅樹は白いタオルを濡らすとシャワーをかけながら優しい手付きで顔を拭ってくれた。
白いタオルに赤と黒っぽい染みが付く。
「目…閉じて」
今度は瞼の上を柔らかいタオルが往復する。
白いタオルにどんどん染みが広がっていくと汚れた自分が少しキレイになったような気がした。
「真子…辛いだろうけど少し我慢……出来るか?」
洗ってくれている最中に手を止めた雅樹が真剣な顔をした。
何を言われているの分からなかったが雅樹の視線の先に気付いて私は頷いた。
「ウッ…」
指が入ってきてすぐに出て行く。
「…クッソォ」
俯いている雅樹は肩を震わせながら搾り出すように呟いた。
私は何も言えずにただ終わるのをジッと耐えるしかなった。
雅樹は頭のてっぺんから足の先、指の爪の間まで時間をかけてタオルで拭うように洗い途中何回かタオルを取り替えてくれた。
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