『いつかの夏へ』
4

 風呂から出ると体を拭いて用意してくれた服を着せてくれた。

 そしてシングルベッドに寝かせてくれた。

 雅樹も寄り添い私を抱き締めながら横になった。

「ごめんな。怖かったよな。もう怖い思いさせないから…絶対させないから」

 雅樹が泣くのを初めて見た。

 目に涙を浮かべた顔を私の肩口に押し付けている。

 ジワァッと温かくなるのを感じた。

「私…雅樹の彼女でいていいの?」

「バカが!お前は俺の女だって言ってるだろ!」

「だけど…もう…」

「俺には真子しかいない…真子だけなんだ。いつも優しく出来なくてごめんな」

 雅樹は私の体を強く抱き締めながら嗚咽を漏らした。

 私は恐る恐る雅樹の背中に手を伸ばすと気付いた雅樹が引っ張って背中に付ける。

 雅樹が私の顔を自分の胸に引き寄せた。

「もう離れるな。俺のそばを離れるな…。ずっと俺だけを見てればいい」

「ん…」

 声にならずに頷くと雅樹のTシャツを掴んでしがみついた。

 二人とももう言葉にならなかった。

 ただ今そこにあるぬくもりを確認するようにただ抱きしめているだけだった。

 バイクの音が聞こえない静かな静かな夜がゆっくりと更けていった。


 きつく抱いた腕の感覚
 涙を流していた彼の姿
 怒りを抑えられない声
 愛されていると知って
 初めて過ごす二人の夜
 静かな静かな夜だった


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