『いつかの夏へ』
1
「…であるからして………過ごすように」
まるでサウナのような体育館での長い終業式が終わって教室へ戻ってくる。
すぐに雅樹の姿を探した。
机に雅樹の鞄はない。
(今日は来ないつもりなのかな?)
一学期の期末テストは勉強したせいか追試になる事はなかった。
というより驚いたのは雅樹は…普通に勉強が出来る人だった事。
一度説明すれば理解して問題を解く。
きっと真面目に勉強していれば常に上位に入れるんじゃないかとさえ思う。
けれど雅樹はやっぱり授業にはあまり出ない。
私は心配になって隣のクラスのてっちゃんを廊下から呼んだ。
「雅樹今日休むって?」
「そろそろ来るだろ?遅刻はいつもの事じゃん」
(だけど…今日は終業式だし…)
遅刻といっても昼から来たってもう終わっている。
てっちゃんに心配するなと肩をポンと叩かれて私は教室へ戻った。
席に座って窓の外を眺める。
青々と茂る緑が眩しくて夏の日差しが肌にジリジリと焼き付く。
「オイッ!こらっ聞いてるのか!待て!」
廊下から大きな怒鳴り声が聞こえた。
嫌な予感がして思わず立ち上がる。
その声はだんだんと教室のほうに近づいて来てざわざわと騒ぐ生徒の声も大きくなってきた。
「待たんかっ!!」
一際大きな声が教室のすぐそばで響いた。
[*前] | [次#]
コメントを書く * しおりを挟む
[戻る]