『いつかの夏へ』
5
「チュッ」
手を強く掴まれたまま触れた唇は逆にこれ以上ないくらい優しい。
雅樹は一度離れて私の目を覗きこむと顔を傾けた。
ゆっくりと目を閉じる雅樹に合わせて私も目を閉じた。
「んんっ…ちゅっ…」
雅樹の舌がゆっくりと私の口の中で動き回る。
二人の絡み合う舌の音がやけに大きく響いて私達はその音に触発されたようにさらに激しく求めた。
雅樹は掴んだ私の腕を自分の首に回した。
「ん…ふぅっ…」
私は両手で雅樹の首に抱きついた。
長い長いキスを終えて雅樹がゆっくり離れる。
キスでポーッとしてしまった私の頭を引き寄せて肩に乗せる。
「真子がしろって言うなら勉強する」
「ん…じゃあノートコピーする」
雅樹はタバコに火を点けた。
口や態度は悪くても本当はすごく優しいって事を知っている。
「一緒に卒業しようね」
「卒業…したらさ…」
「なに?」
「いや…いい。ノートコピーしてもパフェはナシだぞ。これ以上タバコが潰れるのは敵わない」
「ひどいっ!!」
怒る私を見て肩を揺らしながら笑う。
雅樹は大きな手で髪をクシャクシャになるまで撫でた。
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