『いつかの夏へ』
3
「俺がなんだって?」
ニンマリ笑いながら私の顔を覗き込む。
カァーッと顔が赤くなっていく。
「何テンパってんだよ。茶でも飲むか?その辺座っとけ」
肩をポンポンと叩かれた。
(はぁ…もう何やってんのぉ)
私は火照った顔をパンパンと叩きながら小さなテーブルのそばに座った。
初めて入った男の子の部屋はタバコの匂いと私の部屋とは違う男の人に匂いがした。
「悪ぃ…コップとかねぇんだ。このまま飲め」
そう言って出てきたのは1リットルの紙パックの麦茶。
ドンッとテーブルの上に置かれた。
「あ、ありがと…」
手を伸ばすともう口は開いていて左右から押すだけで簡単に飲み口が出来た。
(ど、どうしよう…間接キス、だよね)
飲む前にゴキュと喉が鳴った。
「プッ!!何緊張してんだよ!」
笑いながら紙パックを掴むと豪快に飲み始めた。
女の子とは違う男らしい喉が上下に動くのが見える。
プハッと口を離すと私に顔を近づけた。
「飲めないなら口移しにするか?」
「く、く、く、口っ…じ、自分で飲めるっ!」
慌てふためく私を見て笑い転げる瀬戸くん。
私は瀬戸くんの手から紙パックを奪い取った。
両手で支えると私もゴクゴクッと喉が潤うまで飲んだ。
「バーカ、何もしねぇよ。単車乗せてやるって言っただろ」
「あ…そっか」
私は濡れた口元を拭いながらホッとしながら小さく笑った。
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