『いつかの夏へ』
2
「あ、あの…瀬戸くんって…そのお家の人と…」
振り返ってジロッと私を睨んだ。
持っていたお札を財布に押し込むと近寄ってきた。
手をあげて私の方へ伸ばすのを見て私はギュッと目を閉じて体を強張らせる。
(殴られるっ!)
「変な顔してんな。別に仲が悪いわけじゃねぇよ…って仲がいいわけでもねぇけどな」
私の頭をわしゃわしゃと撫でながら笑った。
「言っただろ?この方が楽なんだよ」
ベッドのそばに立った瀬戸くんは学ランを脱ぎ始めた。
派手な黄色のTシャツが現れたと思ったらベルトに手を掛けている。
「せ、せ、瀬戸くんっ!」
慌てて背を向けた。
(嘘っ…そんな…いきなりそんなの…)
心の準備どころから色々準備とか体の準備とか下着とか…みんなで回し読みしたティーン雑誌の記事が頭をよぎる。
「真子…おまえさ」
いきなり真後ろで声がして体をビクつかせた。
髪に触れられている。
「実はすげぇエロいだろ」
そう言いながら喉の奥でククッと笑われた。
「ち、違うもん!だっていきなり瀬戸くんがっ!」
「俺が?」
振り返るとそこにはジャージに着替えた瀬戸くんが立っていた。
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