『いつかの夏へ』
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 再び雅樹と言葉を交わす機会が訪れたのは高二の秋。

 言葉を交わした出来事さえも忘れてしまうほど時が経っていた。



 その日は球技大会。

 一回戦で負けてしまった私達は教室に隠れて流行っていた賭けブラックジャックをやっていた。

「じゃあ、開けるよー」

 ルールは簡単。

 一人に対して五枚の札を順番に見せながら伏せて置く。

 後はブラックジャックの要領でカードを配って終わった時点で親と勝負。

 親は五枚のうち好きなだけ勝負が出来て一勝負100円。

「もー!また真子の勝ちじゃーん!」

「いぇいっ!私って生まれながらのぎゃんぶらぁ??」

 勝ち続けていてはしゃいでいた。

 別にお金なんかどうでも良かったけれど勘が当たったりするのがスリルがあって楽しかった。

「コラァッ!そこにいるのは誰だぁっ!!」

「キャーーーッ!!」

 私達は慌ててトランプとお金をジャージで覆った。

「なぁーんてねぇ〜。何やってんのぉ?」

 二年も同じクラスになった中尾くんが教室に入って来た。

 中尾くんの後ろには無愛想な顔の瀬戸くんがジャージのポケットに手を突っ込みながら付いて来ている。

「もぉ〜〜〜っ!テツー!」

 奈央が中尾くんを叩いている。

「奈央がビビるような事やってんのが悪いんだろー?」

「だって試合終わっちゃったし。あ、テツ達もどぉ?」

「おっ!いいねぇ…やるやるー」

 あっという間に私の前に奈央と中尾くんと瀬戸くんが座る。

「…で、なんで私がまた親?」

「いいじゃん!始めようよーギャンブラー!」

(いや…その言い方は男の子の前は恥ずかしいんだけど)

 私は照れ隠しに笑いながらカードを配り始めた。

 瀬戸くんは相変わらず表情は変わらない。

 結局奈央と中尾くんには勝ち、瀬戸くんとの勝負を残して千円の勝ちだった。

 表情の変わらない瀬戸くんとの勝負は難しかったけれどマイナスになる事はないと全部に勝負する事を決めた。

 結果四勝一敗。

「おまえ…すっげぇ!!」

 瀬戸くんがお金を出しながら声を出して笑っている。

 私は初めての笑顔にびっくりしてジッと見つめてしまった。

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