『いつかの夏へ』
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 雅樹と初めて出会ったのは高校一年の夏休み直前だった。


「真子〜!早く!早く〜!」

「待って〜〜!今行くからぁ」

 授業が終わって先に教室を飛び出した奈央達の後ろ姿が廊下を駆けていく。

(あぁもう!みんな早いんだからっ…)

 鞄の中にようやく荷物を詰め終わって慌てて教室を飛び出した。

 うちの学校は商業高校で男女の比率は圧倒的に女子の方が多い。

 一学年7クラスあるうちに男女クラスは3クラスしかないそして一クラス当たりの男子の数は三分の一。

 高校生になったら彼氏が欲しいと思っていた私は幸運なことに3クラスしかない男女クラスだった。

 でも高校に入学してから三ヶ月経った今でも彼氏が出来る気配はまったくなかった。

 一年一組の教室から飛び出した私は人波を掻き分けながら階段を目指した。

(どうして一箇所にしか階段がないのぉ??)

 5組の教室の向こうの階段目指して勢いよく角を曲がった。

−ドンッ−

「きゃっ!!」

 曲がった拍子に人にぶつかった。

 持っていた鞄の口が開いて中身を辺りにばら撒いてしまった。

「真子〜?まだぁ?」

 階段の下の方から呼ぶ声が聞こえた。

「ごめーん!先行っててー」

 階段を下りるパタパタという音が遠ざかっていく。

(あーぁ…。もう最悪っ)

 ここまで急ぐのには理由があった。

 学校から歩いて5分の所に激安のカラオケボックスがあって土曜の午後やテスト明けは15部屋の行方を賭けて激しい争奪戦が繰り広げられる。

 もちろん私も(主に奈央達が)カラオケ常連組だった。

 一年生の私達にとっては三階というハンデがあるので相当急がないといけない。

 廊下に散らばったノートや教科書を急いで拾い集めた。

(あ…そう言えばぶつかって謝ってない…)

 拾い集める手を止めて顔を上げると近くに立っている男子がジッとこっちを見ていた。

「あ…」

 短めの茶色い髪、吊り上がり気味の瞳、不機嫌そうな仏頂面、短めの学ランにダブダブのズボンでポケットに手を突っ込んでいる。

(瀬戸雅樹…)

 目が合うと思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

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