『君の隣』
 第三章 P9


 貴俊は上着を脱いでベッドに上がった。

 祐二が薄いカーテンを閉めるとほんの少し薄暗くなり密室のような感じになる。

「ネクタイ緩めた方がいーんじゃねぇの?」

 祐二と違ってキッチリとネクタイを締めている。

 苦しいんじゃないかと心配した祐二が横になろうとする貴俊に声を掛ける。

「そうだね。祐二…少し緩めてくれる?」

「な、なんで俺が…」

「やってくれると助かるんだけど…」

 貴俊は気だるそうに手を額に持っていった。

 ベッドの端の方に立っていた祐二は少し不思議そうな顔をした。

 けれど貴俊の方へと歩み寄ると少し体を屈めてネクタイに手を伸ばした。

 目を閉じた貴俊の顔が近づく。

(男のくせに綺麗な顔してるよな…)

 自分の子供っぽい顔とは違い少し大人びた貴俊の顔に同じ男として劣等感を感じた。

 そして恋人としてそんな貴俊の顔を見るのが実は好きなのだ。

 思わず手を止めてしまった祐二はぼんやりと貴俊の顔を眺めた。

「祐二?」

 声を掛けられた時には既に遅かった。

 貴俊がパチッと目を開けてニコッと笑いかけてきた。

「なんか…エッチな顔してる」

 微笑んだ貴俊が首の後ろに手を回すと祐二の頭を引き寄せた。

 驚いた祐二だったが貴俊の上に倒れこみそうになるのを間一髪手で体を支える事が出来た。

「お、お前っ…何してんだよ!」

 貴俊は頭を引き寄せる手は力を緩めることはなかった。

 両手でグッと体を支えているが思ったよりも貴俊の腕の力が強くてプルプルと震え始めた。

(何でこんなに力が強いんだよっ)

「キスしようかと思って」

 何でもない事のように微笑を浮かべて貴俊は返事をした。

(コイツの言ってる事が時々理解出来ねぇ…)

 貴俊は頭の後ろに回した手にグッと力を入れると頭を起こした。

 ボンヤリしている祐二の不意を衝いて唇を重ねた。

 祐二は目を見開いたまま微動だにしない。

 唇を重ねただけのキスを終えた貴俊がゆっくりと顔を離した。

「何で初めてキスした時みたいな顔してるの?」

 祐二の顔を見た貴俊がクスクスと声に出して笑った。

 その言葉で我に返った祐二の表情がみるみる変わっていった。

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