『君の隣』
 第一章 P7


 祐二は怪訝な顔をしながら貴俊がハンガーから制服を外すのを眺めていた。

「何で俺が着るんだよっ!」

「似合いそうだから」

 そう言われるとまんざらでもない祐二は大人しくなった。

「手、通して?」

 言われるままにジャケットに腕を通す祐二。

 貴俊は必要以上に体を近付けて後ろから着せて前に回るとジャケットのボタンを留めた。

「はい、出来た。やっぱり似合うよ」

「そうだろー!俺は何着ても似合っちゃうから困るねぇ〜」

 祐二は上機嫌で姿見の前に立った。

「………」

 祐二は鏡で自分の姿を見て微妙な顔をした。

 確かにこの色は俺に合わなくはない…きっとグレーよりも似あってるとは思うけど…。

 袖の中にすっぽり隠れた腕…体に合ってないジャケットは身長の半分以上を覆ってしまった。

「んーやっぱり可愛いね」

 その形容詞が一番しっくりきた。

「可愛いとか言うなっ!」

 自分も少しそう思ったけど実際そう言われると頭に来てすぐに脱ごうとボタンに手を掛けた。

「もう少し見せてよ」

 貴俊は祐二の背後から抱き抱えるように腕を掴んだ。

「離せって!つーかジロジロ見んな!」

 鏡越しの貴俊の嘗めるような視線に居心地が悪くなり腕の中でもがいた。

「男物のワイシャツを着た女の子…祐二そういうの好きでしょ」

「まぁ…嫌いじゃないな」

 唐突な質問に脳の豊かな妄想細胞で想像すると即答した。

「今の祐二も同じくらい可愛い…クスッ」

「…なっ!!」

「うぐっ…」

 祐二から腹に肘鉄を食らった貴俊が呻いた。

「ばーか!ざまーみろ!」

 ベーッと舌を出しながら乱暴にジャケットを脱ぐ祐二を痛む腹を押さえながら楽しそうに見つめていた。

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