『君の隣』 第一章 P6
視界の中に逆さまに映る壁際に掛かっているオフホワイトのジャケット。
―ギシッ―
立ち上がって壁際に歩み寄るとハンガーに掛かっているジャケットの前に立った。
「何で生徒会長ってだけで制服変える必要があんだよ」
これを着て壇上に上がった貴俊を見た時に自分の知らない人間に見えた。
ずっと隣を歩いていたのにいつの間にか手を伸ばしても届かない先に歩いて行ってしまった。
そんな錯覚。
「俺を置いてくなよ…」
口にしてハッとする。
何言ってんだ?
全然っ意味分からねーって。
祐二は思わず出た言葉の意味が分からず頭をガシガシ掻いた。
「何してんの?」
「うぉっっ!」
急に声を掛けられて体がビクついた。
「おっ、お前!ノ、ノックくらいしろよっ!」
「…自分の部屋に入るのに何でノックするの」
貴俊は手に持っていたスナック菓子の袋を机の上に置くと祐二の横に立った。
「コレ、着て見る?」
貴俊は真新しいジャケットを指差した。
「は?別に着たくねぇし…」
自分が着たいと勘違いされたと思った祐二は嫌そうな顔をした。
「俺が祐二が着たとこ見てみたいから」
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