『君の隣』
 第三章 P3


 左斜め上から徒ならぬ視線を本能的に感じ取る。

 祐二は恐る恐る顔を上げた。

 20センチ近く身長の違う貴俊と目が合った。

 貴俊の唇の端がニィッと吊り上がり瞳が妖しく光っている。

(ま、まさか…)

 その間も止まることなく股間を撫でていた手の動きが急に変わった。

 撫でているだけだったのが突然強弱を付けて揉み始めた。

「…っは」

 下から持ち上げられるような手の動きに祐二の口から思わず声が漏れる。

 祐二は慌てて口を押さえた。

 その手はまるで祐二の体を知り尽くしているように無駄の無い動きで快感を引き出す。

 ズボンの上から巧みに扱かれて膨らんだ先端が下着に擦れてさらに刺激を与える。

「やっ…ん」

 我慢しても声が出てしまう。

 祐二は唇を噛みながら強く吊り革を握り締めた。

(こんな風にするのなんて奴しかいねぇ…)

 祐二が犯人を確信すると貴俊がスッと顔を近づけた。

「こんなに大きくしてやらしいね」

 いつもの体を蕩けさせる甘い声で囁いた。

 ゾクッと腰の辺りに刺激が走る。

「(ヤ・メ・ロ!)」

 貴俊を睨みながら口パクで訴えた。

 けれどまったく止める気配も見せない。

「貴俊っ!」

 咎めるような口調で小さく呟いたが貴俊は聞こえているのかいないのか微笑を浮かべている。

 祐二はすぐにその微笑の理由を知ることになる。


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