『君の隣』
 第三章 P4


 股間を弄っていた手がズボンのファスナーを下ろした。

 祐二の顔色がサーッと変わる。

 下着の上から触られて今までよりもダイレクトに動きを感じる。

「っ…ぁ…っく」

 頭の中に貴俊の長い指が自分の股間を弄っている光景が浮かび上がる。

 ビクンッと祐二の昂りが反応を示した。

 一瞬、貴俊の指の動きが止まる。

 自分の体の反応を貴俊に気付かれた恥ずかしさが祐二を襲った。

(やだ…なんでこんな所でするんだよぉ)

 祐二はつま先立ちになって顔を貴俊に近づけた。

「もっ…や、めろよぉ…」

 快感を堪えながら周りに聞こえないようにと小さな声で訴える。

「いいの?こんなに体近づけておねだりじゃないの?」

 貴俊も同様に小さな声で返した。

 祐二はハッとして自分の体勢を見た。

 周りに聞かれたくないとつま先立ちで顔を寄せたその姿はまるで貴俊の体に寄り添っているように見える。

(ふざけんなっ!)

 祐二はカッとして体を離そうとしたがそれより先に貴俊のもう一本の腕が祐二の腰を掴んだ。

 強い力で抱えられて身動きが取れなくなった。

 それでも何とか逃げようと体を捩っていると周りの人が怪訝な顔で祐二を振り返った。

(な、何だよぉ。俺が悪いのかよぉ)

 それ以上体を動かす事も出来なくなって大人しくなった。

 貴俊がクスッと笑う。

 この瞬間祐二の負けが決まった。

 もう貴俊の指から逃げ出すことは出来ない。

 貴俊の指が完全に勃起した祐二のソレを扱く度に快感で祐二の腰が震える。

 車内に停車駅の案内を告げるアナウンスが流れた。

 わずかに車両の軋む音がして速度が緩くなると祐二がホッとした表情になった。

(次は降りる駅だ。さすがに貴俊もこれ以上はしないよな)

 しかし貴俊の指は引っ込むどころか激しさを増した。

(う、嘘だろっ)

 祐二は驚いて貴俊の顔を見る。

「ね、このままイカせてあげようか?」

 それは淫らな響きのある悪魔の囁きだった。

 祐二は激しく首を横に振った。


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