『君の隣』 第二章 P14
男の俺…って事は貴俊は昔から男が好きだったって事?
俺が男だったから…か?
「何難しい顔してるんだ?」
祐二が考え込んでいると心配そうな顔の貴俊が頭をコツンと小突いた。
男だったら誰でも良かったって事ないよな?
「祐二?俺に隠し事するのか」
黙りこんでしまった祐二を見て貴俊は眉間に皺を寄せて不快感を露わにした。
「俺…俺が男だから好きなのか…?」
縋りつくような不安な色を宿した瞳で見つめてくる祐二が堪らなく愛しく映り貴俊は力いっぱい抱きしめた。
普段は憎まれ口ばかりの祐二も二人きりになるとたまに見せるこういう表情の時はとても同じ人間とは思えない。
「…っ、お前苦しいって!それより答えろよっ」
「祐二だから好きになったんだよ」
良かった…祐二はホッとして体の力を抜いた。
「祐二はどうなの?俺が男だから好きなのか?」
「バカ言うなっ!俺は男になんか興味ねぇーよ!」
「じゃあ…俺は?」
「…ゥッ」
すぐに切り返されて思わず言葉に詰まってしまった。
「お、俺は…男は貴俊だけだからなっ!」
「ふぅーん、じゃあ女はたくさんいるわけだ?」
貴俊の顔からは笑顔が消えて祐二から手を離すと立ち上がろうとしていた。
「ち、違うッ!俺はお前だけだからな、貴俊しか居ないからな!」
祐二は慌てて貴俊の手を掴んで引き止めながら熱烈な言葉を口にした。
「二人ともーご飯よー?」
階下から貴俊の母が呼ぶ声が聞こえた。
「支度できたみたいだ、行こう祐二」
貴俊は祐二の手を引いて立ち上がらせると部屋を出ようとした。
「お、おいっ…お前さっきの聞いてたのか?」
何も言ってくれない貴俊に不安になった祐二は部屋を出ようとする貴俊を引き止めた。
「なぁ…貴俊ぃ」
「風呂一緒に入ったら信じるよ」
振り向いた貴俊は祐二の耳元で囁くと祐二は顔を赤くして手を振り払った。
コイツ…ほんっとムカツク!!
怒ったのかと思って心配した俺がバカみてーじゃん。
部屋を出ようとノブに手を掛けるとその上から貴俊の手が重なって後ろから抱きしめられた。
「次は最後までしような?」
甘い声で囁かれたその言葉に祐二は慌てて顔を上げたが貴俊は素知らぬ顔で部屋を出て行った。
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