『君の隣』
 第二章 P13


 陽が落ちて薄暗くなった部屋で祐二は貴俊に抱えられるように座っていた。

 薄暗くなったせいか恥ずかしさも照れくささも減って祐二は安心しきった顔で貴俊に体を預けている。

 言葉を交わさなくても同じリズムでされる呼吸で二人は心地良い空間の中を漂っているようだった。

「祐二、うちで飯食ってく?」

「んー?」

 ウトウトとしていた祐二は声を掛けられてぼんやりと貴俊の顔を見上げた。

「グラタンだよ?好きでしょ」

「そうだけど、さ」

 今までだって何度もこっちで飯食ってるけど、こんな関係になってしまったらどんな顔すればいいんだよ。

「俺は祐二と一緒に飯食いたいよ?昔みたいに風呂も入って泊まってけば?」

「ば、ばかっ!何言ってんだよっ」

 いつもいつも貴俊の発言は祐二を慌てさせた。

「別に恥ずかしがる事ないだろ?」

「お前なぁ…そんな事ばっか言って恥ずかしくないのかよ」

 自分の腰に回された貴俊の腕を軽く叩いて呆れたような口調で問いかけた。

「恥ずかしがる祐二を見たいからね」

「そんな事考えてんのかよっ!」

 祐二が慌てて振り返ると貴俊がクスクスと声を上げて笑いながらぽんぽんと頭を叩いた。

「お前からかってんだろ…」

 子供扱いされてるようで腹立たしそうに手を払った。

「好きだよ」

 貴俊は反省する様子もなく手櫛で髪を触りながら祐二のこめかみの辺りに音を立ててキスをした。

 祐二はくすぐったそうな顔をしたが振り払う素振りを見せないので貴俊はもう一度唇を寄せた。

「なぁ…お前さぁ。俺の事…その…いつから好きだったんだ?」

 あの日からずっと聞いてみたかった事をようやく口に出す事が出来た。

 俺が貴俊への気持ちに気付いたのは最近だけど、貴俊の口振りだと前からそうだったような感じだけど…。

 貴俊の答えが気になって伺うような目で貴俊の顔を覗きこんだ。

「んー気が付いた時には祐二を抱きしめてキスしたいと思ってたよ」

 あまりにストレートな言葉に聞いた祐二の方が恥ずかしくなった。

 気が付いた時ってそんな昔から俺の事…。

 正直まだそういう言葉には慣れないけど男の俺をそう思っててくれたのは嬉しい…。

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