『君の隣』 第二章 P7
「そんな顔ってどんな顔だよぉ」
「思わず襲いたくなるような可愛い顔」
「お、襲いたくなるって!俺は男だぞっ!」
貴俊の言葉の響きが妙に淫らな感じがして祐二は恥ずかしくて仕方がない。
「分かってるよ。でも俺の可愛い恋人だろ?」
頬にキスをされながら甘い言葉を囁かれた途端祐二は困った顔をした。
恋人ってのは分かってるけど普段はあんま実感とかねーから考えた事なかったけど恋人ならキスの先も当然で…さ、最後までするんだよな。
頭の中に知識だけはあった男同士の映像が浮かぶ。
あ、あんな事出来るわけねーって!
「祐二?どうした?」
優しげな瞳と目が合うと心臓がドクンと跳ねた。
や、やっぱり俺が女役になるんだよな?
「な、何でもねーって!」
「嘘。何でもないって顔じゃないよ」
頭の中の事を悟られたくない祐二は目を合わさないように必死に貴俊の腕の中から逃れようともがいた。
「俺に言えないような事?」
貴俊は祐二の顔を両手で挟むとぐぃっと顔を近付けた。
今にも唇が触れそうな位置まで近付くと祐二は落ち着きなく目を泳がせていたがそれも辛くなるとギュッと目と瞑った。
「祐二、キスのおねだりか?」
「おねだりとか言うな!だいたいお前はなーすぐにエロい事ばっか言いやがって頭ん中どーなってんだよ!」
「決まってるだろ。エロい事でいっぱいだ」
あっさりとしかも冷静にそんな事を言われては憧れの生徒会長様のイメージが台無しだ。
「お前なぁ…生徒会長がそんな事言っていいのか?生徒の模範に…ん」
祐二の言葉を遮るように貴俊は唇を塞いだ。
「ん…ぷはっ!何すんだよ!」
「今は祐二しかない居ないからありのままの自分で居たいんだ」
いつもこうだ…。
どんな時だって貴俊は俺の喜ぶような事を簡単に口にするんだ。
「じゃあ学校のお前は尊敬される生徒会長様だけど、普段のお前はエロエロ大王様だな」
「言ったろ?祐二の前でだけ」
照れ隠しで言った言葉だったのに、そんな思惑さえも貴俊の前では無駄なあがきでしかなかった。
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