『君の隣』 第二章 P6
貴俊がベッドの方に目を向けると、祐二は大きな猫目を涙で潤ませながらシャァッ!と今にも飛び掛りそうな勢いで構えている。
「あー祐ってば意外とウブなんだぁ」
ウブって何だよッ!
俺だって今まで彼女だって居たんだからそれなりに経験だってあんだからな。
「そこがまた可愛いんだけどね」
祐二が反論する前に貴俊が返事をした。
「すごいラブラブ〜!ごちそうさまぁ!もっと聞きたいけどお邪魔だから帰りまーす」
手をヒラヒラと振りながら日和は部屋を出て行った。
二人っきりになった途端、貴俊はベッドに上がると祐二を抱き寄せた。
「何、すんだよっ!」
壁にもたれた貴俊の足の間に座らされた祐二は逃げ出そうと暴れたが逞しい貴俊の腕の中では無駄なあがきだった。
「何で?嫌なの?」
優しい声で囁かれると祐二はどうにも抵抗出来なくなる。
といっても実際のところ貴俊にこうされるのがまんざらでもない祐二はそこまでひどく抵抗する事はなかった。
ったく男のくせに恥ずかしくないのかよ。
まだどうにもこの状態に慣れない祐二は何よりも先に恥ずかしさが先行してしまう。
しかもなぜか自分が女扱いされているような気がして仕方がない。
確かに…身長差じゃ俺が貴俊を抱っこするとか無理だけど。
抱っこ…ってさすがに自分の中から出て来たその言葉に寒気がした。
「考え事?」
貴俊は祐二の顔に手をやるとそのまま後ろを向かせた。
「何でもないっ」
自分の中で色々考えていた事を悟られないように素っ気無く答えたが貴俊は離そうとせず顔を近付けてくる。
「祐二…」
この声が好きだ。
囁くように名前を呼ぶ貴俊の声が好きだ。
ぼんやりしているといつの間にか貴俊の唇が重なった。
拒む間もなく貴俊の舌が唇を割って入って来ると祐二はぎこちなく舌を動かした。
「…はァ…ふ…ン」
何度か舌を絡め合わせて祐二の息が上がってくると貴俊はようやく唇を離した。
貴俊のキスにうっとりとした表情を浮かべた祐二はすっかり身体を預けてしまっていた。
「そんな顔他の奴に見せたりするなよ」
貴俊は恋人の色っぽい表情に危機感を感じて釘をさした。
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