『君の隣』
 第一章 P25


 俺…死ぬのかも。

 今まで味わった事のない胸の苦しさにぼんやりとそんな事を思った。

 俺が死んだら貴俊の奴泣いてくれんのかな。

「お兄ちゃーん」

「勝手に入ってくるなっ!」

 祐二は妹が部屋に入って来るなり怒鳴りつけた。

「何怒ってるの?私のマンガ返してよね」

 妹の琴子は睨みつける祐二をチラッと見てから床に置かれた本の山を探った。

 イライラとしながら妹を睨みつけた。

「さっさと出て行けよ」

「何、イライラしてるのー?」

「うるせぇ!」

「あっ!まだ貴兄ちゃんと仲直りしてないんでしょー?」

「アイツの名前なんか言うな!あんな奴男のくせに女の前でヘラヘラデレデレしやがって!」

 忌々しそうに言うと顔をゆがめて祐二は近くにあった枕に拳を何度も叩き込んだ。

 その姿を見ていた妹は呆れたように笑った。

「ヤキモチ妬いてるんだー」

「はぁ?」

 妹の言葉に間抜けな声を出した。

「だって貴兄ちゃんが女の人いるの見てイライラしてんでしょ?」

「う…ぐっ」

 腹の立つ事を言われているにも関わらず祐二は妙に妹の言葉がしっくり来ていた。

「ヤキモチ妬いて拗ねてるなんて可愛い事するなんてお兄ちゃんも結構乙女だねー?」

「お、乙女ぇ?」

 裏返った声で返事をする祐二を見て笑いながら妹は部屋を出て行った。

「お、俺が乙女?」

 全然意味が分からないとでも言うようにブンブンと頭を振っているとまた部屋のドアが開いた。

「今のお兄ちゃんは独占欲の塊だね?」

「独占欲って何だよ!!」

 フフフと意味ありげに笑う妹に祐二は枕を投げ付けたがひょいと簡単にかわされた。

「モタモタしてると本当に他の人に取られちゃうかもねぇ?」

 ニヤリと笑って早口で言うと今度こそ部屋から出て行った。

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