『君の隣』
 第一章 P23


 駅に着くと祐二は貴俊に支えられるように電車から降りた。

「祐二、大丈夫?」

 さっきの車内の冷酷な表情とは変わっていつもの穏やかな貴俊だった。

 その顔を見て心からホッとした。

「あ、ありがとな…」

 祐二は素直にお礼を言うと貴俊は小さく頷いた。

「さ、先に学校行っててくれないか?」

「気分悪いなら俺も…」

「い、いや…遅刻したらいけねぇし…す、すぐ行くから」

 そう言って祐二は貴俊を先に学校に行かせた。

 悔しいけれどあの痴漢のおかげで限界だった。

 あんな痴漢に達かされなかっただけでマシだったけどなかなか熱が冷めない自分のモノを処理する必要があった。

 祐二は足早にトイレへと急いだ。

 中に誰も居ない事を確認すると個室へ入った、しかし扉を閉めようとした瞬間何かに遮られた。

「た、貴俊!?」

 扉を片手で遮るように祐二の後ろに立っていた。

 驚く祐二に構わず貴俊は押し込むように個室に入って来た。

「な、何だよ。学校行ったんじゃ…」

「苦しいんでしょ?」

 貴俊はあっという間にベルトを外して祐二のズボンと下着を下ろした。

「は、離せって…」

 祐二は痴漢に続いて今度は貴俊にペニスを握られた。

「んっ…ぁ…ッ」

 さっきまでは吐き気がするほど嫌だったのに貴俊の手の動きに祐二はどんどんと快感を高められていく。

 貴俊は涙目の祐二を見つめながら出来る限りの優しい動きで祐二を絶頂へ導こうとしていた。

「貴俊ぃ…だめぇ…離…せっ…ンっ」

「祐二、声抑えないと聞こえるよ?」

 貴俊の言葉に祐二は唇をギュッと閉じた。

 扉の向こうで足音が聞こえた。

 えぇっ!?

 祐二は目を見開いて貴俊の顔を見た。

「んーんッ…」

 貴俊は祐二の目を見つめながら手の動きを早めた。

 祐二は声が漏れそうになるのを必死に堪えながら貴俊に涙目で訴えた。

 そんな祐二の姿は貴俊には欲情をかきたてる材料でしかなかった。

「…!?」

 声を漏らす祐二の唇に貴俊の唇が重なった。

 祐二は目を見開いたまま目の前で目を閉じてキスをする貴俊の顔を見つめた。

 何で?とかどうして?とか色々考えたいのに頭の中はもうすっかり貴俊の手の動きに支配されていた。

 貴俊の手の動きに合わせてくちくちと濡れた音が狭い個室に響く。

「んんっ…くちゅ…」

 息苦しくなった祐二が口を開けるとすかさず貴俊の舌が滑り込んで来た。

「はぁ…んッ…くちゅッ…」

 祐二はもう何が何だか分からなかったけれど自分の中の昂りは抑えられずに夢中で貴俊の舌を吸った。

 それに応えるように貴俊の手は祐二を絶頂へと導いた。

「ん…はぁ、はぁ…ふ…ぅ」

 祐二は思いっきり精を吐き出すと貴俊の胸に顔を埋めるようにもたれかかった。

 まだ息の荒い祐二を貴俊は優しく抱き寄せた。

 自分の服を握り締めながら自分に体を預ける祐二をいとおしそうに貴俊は見つめた。

 どのくらいそうしていたか分からないが、二人共すっかり体から熱が引いてしまった頃貴俊が口を開いた。

「学校行けそう?」

 その言葉に祐二は慌てて体を離すと貴俊は少し残念そうな顔をした。


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