『君の隣』
 第一章 P22


 あれから朝までぐっすり眠った祐二は朝気持ちよく目覚めた。

「俺…やべぇかも」

 目が覚めてぼんやりと記憶に残る夢を思い出した。

 好きだと告白した貴俊にキスをされた。

 しかも俺は何故か嬉しそうに笑ったんだ。

「はぁ…キテんなぁ俺」

 見た夢はきっと近頃アイツの事で色々と頭を使ったからだと結論付けた。

 こんな夢を見ないようにするには早く今まで通りになる事だ。

 祐二は改めて貴俊に謝る決意を固めた。

 だが今日も貴俊は迎えには来ず祐二は一人で電車に乗った。

 もちろん、一昨日とは時間も車両も変えた。

 学校へ着いたらすぐに貴俊に謝ろう、それで今日の帰りは久し振りに一緒に帰って…

 頭の中でシミュレーションをしていた時だった。

「…ッツ!!」

 背後にぴったりとくっつく気配を感じた。

「昨日はどうしたの?」

 中年の声がしたかと思うといきなりズボンの上から前を撫でられた。

 ど、どうして…。

 完全に無防備だった祐二は慌てて手を動かしたが痴漢に両手を後ろで拘束されてしまった。
「最後まで気持ちよくしてあげるからね」

 生暖かい息を吐かれながら耳元で囁かれた。

 痴漢の手はジッパーを下ろして今日はすぐに下着の中へと入り込んだ。

 や、嫌だ…。

 祐二は逃げ出そうと体を動かしたがビクともしない。

 その間も痴漢の手は祐二のモノを巧みな動きで弄っていた。

「やっ、やだ…」

 この前よりも大胆な動きに祐二は翻弄されていた。

 こんなの嫌だ…。

 自分の無力さを思い知らされて涙が出る。

 今まで一度もなかった。

 貴俊がいればこんな事に遭わないんだ。

「…ぃ…いや…っ」

 痴漢が先端の割れ目に指を入れた。

 だが痴漢は楽しそうに指を動かして滲み出ている液を先端に塗りつけた。

「気持ちいいの?すごい濡れてるね」

 気持ち悪い声に吐き気がした。

 大きくなった自分のモノを好き勝手に弄られてでもそれに反応して声を漏らす自分が嫌だった。

 どうして貴俊が居ないんだよ!

 アイツはいつも俺の側に居ないといけないのに。

「ひぃっ…!」

 急に痴漢の手の動きが早まって祐二は射精感を抑える為に必死に堪えた。

「達かせてあげるよ」

 祐二はそれだけは避けようと必死に体を捻って涙を流しながら頭を振った。

 貴俊ぃ…助けろよぉ。

 何で側に居てくんねぇんだよぉ

 祐二は自分勝手に心の中で貴俊を責め立てながら何度も何度も貴俊の名前を呼んだ。

「貴…俊ぃ…」

 思わず声に出すと急に自分の股間から痴漢の手が離れて両手が自由になった。

 ホッと息を吐きながら震える手で慌ててジッパーを上げた。

「この下衆が」

 低く唸るような声を聞いて慌てて顔を上げた。

 そこには痴漢の腕を捻り上げている貴俊の姿があった。


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