『君の隣』 第一章 P20
学校へ着くとトイレへ直行して手を何度も洗った。
本当はアソコも洗いたかったけれどそれは我慢した。
気持ち悪い…。
気持ち悪い…。
祐二は真っ青な顔をしてトイレにしゃがみ込んだ。
まだしっかりと痴漢の手の感触が残っている。
あんなに嫌だと思ったのに反応してしまった自分に吐き気がした。
男のくせに何で痴漢にあうんだよ…。
「祐…二?」
自分を呼ぶ声が聞こえて顔を上げた。
心配そうな顔で貴俊が立っているのを見てホッとした。
「どうした?顔真っ青だけど…」
「な、何でもねぇよ!」
強がってこんな口調でしか答えられない自分が嫌だった。
だけど今の自分には気を使う余裕はなかった。
祐二は痴漢にあった事がバレないように笑顔を作って立ち上がったが足が震えていてよろけてしまった。
倒れそうになった祐二は貴俊の腕に抱きとめられた。
「祐二?大丈夫?」
貴俊の息が首に掛かると貴俊を突き飛ばして祐二は飛び退いた。
「さ、触るなッ!!!」
祐二は叫んでからハッと我に返って貴俊の顔を見た。
辛そうな顔をして祐二を見つめていた。
「あ、ぁ…あの…違っ…今のは」
「ごめん。もう二度と近付かない」
「待っ…て!違うっ…」
祐二は慌てて引き留めたけれど貴俊は祐二の言葉も聞かずにその場から立ち去った。
何でこうなるんだよぉ。
祐二は頭を抱えてしゃがみ込んだ。
[*前] | [次#]
コメントを書く * しおりを挟む
[戻る]