『君の隣』 第四章 P11
(……これはどういう事だよ)
明かりの消えた部屋の中で祐二はベッドの上で仰向けに寝てもう一時間以上も天井を見つめている。
そして床に敷いた布団の上には貴俊が眠っている。
明日は休みだからとゲームをして家中が寝静まった頃に電気を消して布団に入った。
祐二はてっきり貴俊がベッドに入って来るのだろうと待っていたけれど貴俊は「おやすみ」と言って布団に入ったきり動く気配がない。
「貴俊……寝たのか?」
小さな声で話しかけて少し待ってみても返事が返って来ない。
(マジで寝たのかよ)
寝返りを打った祐二は背中を丸めながら最後に体を重ねたのはいつだったか思い出す。
二学期が始まってからはやり残した課題や実力テストに追われていた自分と毎日のように生徒会と部活に追われている貴俊、せっかくの週末も家の用事とかでゆっくりする時間もなかった。
ずっと遡って思い出したのは夏休みの最終週で宿題をやるつもりで貴俊の部屋に行った時に家に誰もいないからと襲って来たのが最後だ。
「誰のせいで課題出来なかったと思ってんだよ……」
すべての課題が終わらなかったのは決してそれだけが原因じゃないのは分かっていたけれどあの日はいつになく自分もやる気というか追い込まれて切羽詰っていたからもしかしたらすごい集中力を発揮して課題を終わらせる事が出来たかもしれない。
さすがにそれは無理な話とは思ったけれど腹立たしさついでにすべて貴俊のせいにしたい気分だった。
「もしかして俺のせいとか思ってる?」
「ヒィッ!!」
急に声を掛けられた祐二は裏返った声で悲鳴を上げた。
いつの間にか起きた貴俊が膝立ちになって祐二の顔を覗きこんだ。
暗闇のいる貴俊と目が合った祐二は逃げるように後ずさりながら驚きで跳ねる心臓をTシャツの上から押さえた。
「お、お前、寝てたんじゃねぇのかよっ」
「ん? 寝てたよ。寝てたフリ」
「それは寝てるって言わねぇんだよ!」
「シーッ、みんな起きるよ?」
悪気もなくニッコリ笑う貴俊はカッとして大声を出した祐二の口を手で覆った。
今が何時かという事を思い出した祐二は小さく頷くと口を覆っていた手はすぐに外された。
「眠れないの?」
膝をついたままの貴俊は覆い被さるように祐二の顔を覗きこんだ。
両側に手を置かれて逃げ場を失った祐二は右に左にと視線を泳がせてからゆっくりと貴俊の顔を見た。
「べ、別に……」
「ベッドに入ってから何度寝返りを打ったの? ねぇ、どうして眠れないの?」
触れ合うほど近付いた唇が声を吐き出すたびに貴俊の吐息が唇に触れると祐二は唇を震わせた。
まだどこにも触れられていないのに貴俊の低い声と吐息だけで愛撫されているような錯覚。
でもそれは錯覚なんかじゃないと少しずつ熱くなっていく自分の体が訴える。
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