『君の隣』
 第一章 P12


 結局学校では一度も貴俊と言葉を交わさなかった祐二は 朝と同様一人でトボトボと家までの道のりを歩いた。

 だいたいアイツもおかしいよ。
 
 あんな事したくせにどうして普通にしてられんだよ。

 つーか男のモノ握って達かせて何が楽しいんだよ。

「………」

「もしかして…ホモォ!?」

 思いついてしまった答えを口に出して慌てて周りを見渡した。

 バ、バカ…そんなわけあるかぁ!

 あんなに女にモテる奴が男の方がいいなんてそんな事あるかよ。

 自嘲気味に笑うとちょうど自分の家に着いたところだった。


 コンコン−

「なにー?」

 ベッドに寝そべってマンガを読んでいた祐二は気のない返事を返した。

 カチャ−

「何、母さん」

 ドアの開く音がして体を起こした。

 入り口で立っていたのは制服姿の貴俊だった。

 貴俊は滑るように部屋に入って来ると後ろ手でドアを閉めた。

「か、勝手に入って来んなよっ!」

 一番会いたくない人物の登場に心臓が飛び跳ねた。

「ノック…したでしょ?」
 男のくせに妙に色気のある声が耳障りだ。

 会いたくなかった。だけど言いたい事も聞きたい事も山ほどある。

 祐二の気持ちとは反対に思うように口が動かない。

 祐二はベッドの上で体を硬くして俯いていた。

「祐二…俺の事避けてる?」

 この時の貴俊の表情を見ていたら俺はあんなヒドイ事を言わなかったかもしれない。

 避けてるに決まってんだろ!

 朝だって一人で行ったし学校でだって口聞かなかったんだからそれくらい分かってるくせに聞くなよ。

「昨日の事だけどさ…」

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