『君の隣』
 第一章 P11


 チュン、チュン…

「祐二!?まだ7時前っ!」

「いってきます」

 背中で母親の驚く声を受けながら祐二はいつもより1時間も早く家を出た。

 無理。

 俺、絶対、ぜーったい無理。

 どんな顔してアイツに会えばいいのか分かんない。

 今朝は貴俊の迎えを待たずにいつもより1時間も早く家を出た。



「おっはよー祐!今日は早いねぇ〜」

「おぉ。はよ」

 机に突っ伏してウトウトしていた祐二の耳に自分と天と地ほどの差があるハイテンションな声が届いた。

「あれぇ?貴はぁ?」

 日和はキョロキョロと教室を見渡した。

「知らね」

「ふぅーん。ケンカでもしたぁ?」

「知らないってばっ!!」

 大声で怒鳴り返された日和は首をすくめて祐二の後ろの席に座った。

「あっ!貴〜おっはよぉ!」

 えっ!?

 い、いつもより早いじゃんかっ!

 まだ来ないと思っていて心の準備が出来ていなかった祐二は激しく動揺した。

「おはよう日和」

 すぐ後ろで貴俊の声が聞こえた。

「祐二…おはよ」

 声と一緒にいつものように大きな手の平が頭に触れた。

 手…。

 濡れた指を舐めた貴俊の顔が頭に浮かんだ。

 ガタッ、ガタンッ!!

「お、俺…便所っ!!」

 祐二は立ち上がると全速力で教室を飛び出した。

[*前] | [次#]

コメントを書く * しおりを挟む

[戻る]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -