ネコちゃん君の隣

「篠田、どうしたん、その背中」

 更衣室で着替えていた時のことだった、突然そう声を掛けられて、貴俊は体操着を腕に通したまま肩越しに振り返る。

「背中?」
「ミミズ腫れっつーの? 赤くなってんぞ」
「ああ、実はさ昨日ネコに引っ掛かれちゃって」
「マジで? すっげぇ痛そう」
「んー、見た目ほど痛くないし、俺もちょっと意地悪しちゃったから自業自得なんだよね」
「なんだよー休みのくせにネコと遊んでんのかよー」
「ははは……でも、すっごく可愛いんだよ」


「ねぇ、祐ーぅ。貴ってネコなんて飼ってたっけぇ?」
「知らねぇ!!」

 やり取りを聞いていた日和が質問を投げかけると、祐二は更衣室の隅でうずくまってしまった。

「ゆーーぅ?」
「殴る、ぜってぇ殴る! くっそぉ……」

 耳を赤くさせながら小さく呟く祐二の姿に、日和は「ああ!」と納得したように頷いてから、うずくまる祐二の背後に寄りこっそり囁いた。

「きっと飼い主くんはネコちゃんを傷つけないように、いつも綺麗に手入れしてるはずだよー。だ・か・らー、ネコちゃんも爪は切っておかないとねぇ」

 日和は自分の手元に視線を落とし、「飼い主に切ってもらうってのもアリだよねぇ〜。らぶらぶぅ」と鼻歌交じりに呟いた。

オワリ。



prev | next

comment
戻る
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -