V 作戦通り

「アレスは屋外からの援護射撃をしろ」
「分かった。多分大丈夫だけど無理そうなら駆けつける」
「ああ、それはプランCとしておくぞ」
「恐らくプランBになる可能性が高いよな、これ」

 今晩、ボンゴレに盾ついたファミリーのアジトへ攻め入る。選ばれた幹部はスクアーロと私だ。二人で部下を提げて夜中に突っ込むのだ。因みにスクアーロと私が選ばれるということは、つまりそれだけ難易度が高いことを示す。何てったってヴァリアーNo.2のスペルビさんと優秀なアレスさんだからね。
 というわけで当日の昼間にもこうして最新の情報を元に計画を練り直しているのである。とはいえ、やる事はいつもと変わらない。基本はスクアーロは自由に暴れて私は遠くからバシバシ撃つ。私はスナイパーが大好きだ。

 私は幹部である為、後方隊の隊長を務めている。スナイパーでバシバシ援護して戦局を俯瞰して把握し行動する目的の隊だ。私程ではないが腕利きのスナイパー使い達が揃っている。あとは幻術で自由に逃す担当の霧の炎の人たちと回復担当の晴れの炎の人たちがいる。皆それぞれが1人で暗殺上等な人たちだから普段は分かれて活動している。今回も一部の隊員を連れて行くのだ。


 暗くなってから出発の準備をする。普段通り耐火性のあるインナーを着てヴァリアーの制服に身を包む。女だとバレるメリットなど無いから体型を隠すように前をしっかりと閉める。きちんとメイクはしているものの顔も見られたくないからマスクをつけるのが私のスタイルだ。
 そして手袋の上から雲のヴァリアーリングを着ける。ポケットには匣を入れた。毎日丁寧に手入れしているスナイパーと大剣をそれぞれ収納したものと、未来の記憶からやって来た私の相棒の3つだ。

「う゛お゛ぉい」
「相変わらず汚え挨拶だな」
「うるせえ!それに挨拶じゃねえ!」

 廊下ですれ違っただけのスクアーロも煩い。何がどうなったら「う゛お゛ぉい」なんて口から出そうという発想になるのか全く分からない。

「じゃあ後でな」
「余計なフラグ立てないでよ」
「廊下ですれ違っておいて無視すんのも違えじゃねえか!」

 これだけ元気なら大丈夫そうだ。スクアーロは素直だからコンディションが良いのはすぐ分かる。そもそもプロだから悪いことなんて無い訳だけれども。

 一緒に敵の根城へ行くことなどはせず、それぞれの隊毎に動く。移動の車で隊員と作戦を再度共有する。しばらくして目的地に到着した。車から降りて予定していた位置につく。インカムで隊員と連絡を取り、その後スクアーロに繋いだ。

「こっちは全員準備出来たよ」
『分かった、今から突っ込むぜぇ』

 その声を聞いてスコープを覗く。例えカーテンで隠されても影を見逃さない。動くものが目に着いたら可愛い動物以外は全て撃ち抜くのだ。
 これが今回の作戦のプランA。スクアーロが建物内で暴れて私が援護射撃する、ノーマルなプラン。けれど今回はプランBの可能性が高いのだ。

『来ました』

 隊員からの通達が入る。やはり、と声を漏らしてその隊員がいる方へ向かう。匣に炎を注ぎ、相棒に登場して頂いた。私の相棒は雲オオカミである。移動がめちゃくちゃ速くて強い子だ。

 今回の突撃は相手にバレている可能性が高い。そうでなくとも相手のアジトである為、地の利はどうしても相手側にある。となると、相手側にも様々な戦略を立てる余地がある。今回は私たちの読み通り、アジトを囲う山から建物ごと砲撃する予定だったのだろう。または私たちの存在がバレていたか。どちらにせよ、今回の敵はこちら側が本命で合っているらしい。

 スナイパーを収め、大剣を取り出す。接近戦ではこちらを使う。そしていつも通り余裕で敵を倒し、遺体を物色したら仕事は終わりだ。周囲の敵は私の隊で一掃し、スクアーロに終わった連絡をしたら『こっちもだぁ!』とクソデカい声で言われた。戦いが終わってテンションが上がっているのだろう。面倒な奴だ。


 一応戦闘で炎も使って疲労はあるものの部屋に帰ってすぐお休みといかないのが雇われ暗殺者の面倒な所である。寝る前に今回の戦闘の報告書をまとめ、明日の任務の確認をする。次々に送られてくる隊員からの報告書は明日まとめるとして。それと武器の手入れは暗殺者として当然の役目だ。これらが終わってようやく眠りにつくことが出来る。明日もきっとお肌の調子は最悪だ。

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